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10月より住宅紛争処理制度の範囲が拡大されました 〜安心して住宅を取得できる社会を目指して〜

中部経済新聞令和4年11月掲載

愛知県弁護士会 弁護士 今泉麻衣子

 住宅取得は、多くの方にとって一生に一度の大きなイベントです。万が一トラブルが生じた場合に、住宅取得者を保護する制度があることをご存じでしょうか。

 平成12年4月に施行された「住宅の品質確保の促進等に関する法律」(住宅品確法)により、①住宅性能表示制度という住宅の性能をわかりやすく表示する制度が設けられ、②建物の構造耐力上主要な部分と雨水の浸入を防止する部分(特定住宅瑕疵)に売主・施工業者に10年間の瑕疵担保責任が義務化され、③トラブルを迅速に解決するための指定住宅紛争処理機関が設けられました。

 しかし、いわゆる姉歯事件で、住宅品確法が10年の瑕疵担保責任を義務化しても売主・施工業者等が倒産した際に住宅取得者が救済を受けることができないという課題が浮き彫りになり、「特定住宅瑕疵担保責任の履行の確保等に関する法律」(住宅瑕疵担保履行法)により、平成21年10月以降に引き渡しがなされる住宅に、供託又は保険による資力確保措置が義務づけられました。

 一定の新築住宅については、住宅品確法により整備された制度である、専用のフリーダイヤル(住まいるダイヤル)による電話相談、各弁護士会での面談相談(一定の場合はWEBも可能)、各弁護士会に設置された住宅紛争審査会における紛争処理手続を利用することができます。愛知県においても、毎年度120件程度の面談相談及び毎年度10件程度の紛争処理の申請がなされています。

 また、住宅瑕疵担保責任保険には、「保険付き住宅」に付す1号保険の他に、いわゆる2号保険という、住宅瑕疵担保履行法第19条第2号に基づく保険(リフォーム瑕疵保険、既存住宅売買瑕疵保険等)もあります。これらは従前、相談や紛争処理手続の対象外でしたが、本年10月1日に施行された法改正で2号保険も対象に含まれることになり、対象が大きく拡大されました。

 昨今、中古住宅の流通促進、リフォーム市場の活性化に向けた取組が進められており、今後ますます、住宅取得の手段として、中古住宅の取得が積極的に検討され、リフォーム工事も増加すると考えられ、住宅紛争処理制度等が整備されていることが住宅取得者の安心材料となることが望まれます。

 しかし、現状、中古住宅売買やリフォーム等に際しての2号保険の利用はそこまで多くありません。今回の対象拡大の実効性が高まるよう、まずは、保険制度の利用が促進されるような更なる制度の周知が期待されます。