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リニア中央新幹線・建設現場視察 ~中津川市・恵那市視察(継続現地視察)~

会報「SOPHIA」令和5年3月号より

公害対策・環境保全委員会 委員 飯 島 吾 郎

1 はじめに
 3月6日、当委員会は、リニア中央新幹線(以下「リニア」)建設問題について、中津川市及び恵那市へ視察に行きました。
 リニア建設は、日本における21世紀最大の民間事業とも言われています。当委員会では、多方面に渡るリニア建設問題について、これまでも継続的に視察等をしてきました。
 今回の視察では、リニア問題に取り組む4団体(東農リニアを考える会、リニアを考える岐阜県民ネットワーク、リニアを考える坂本住民の会、リニア問題を考える恵那市民の会)から岐阜県におけるリニア建設工事の現状や問題点につきレクチャーを受けた後、現地を視察しました。
2 リニア車両基地建設と旧ため池の改修
 中津川市には、リニアの車両基地となる中部総合車両基地の予定地があり、旧中山間農業研究所中津川支所の農業試験場跡地を含む山林を、車両の保管場所に適するように水平にする地ならし工事(大規模な切土及び盛土)が、現在行われています。
 この工事現場の隣接地には農業用のため池あり、伐採する山林の保水機能を代替するため、このため池を調整池としても利用するとのことでしたが、地元の農家らからは兼用とすることへの懸念が示されていました。ため池の上流側の山林は、リニア建設工事で排出される要対策土(カドミウムやヒ素等の有害物質を含む残土)の大規模な恒久処分場となる予定であり、地元では大雨等の災害時に、ため池に残土が崩れ落ちたり、遮水シート劣化による有害物質が漏出したりすることで、ため池が汚染される可能性があるからです。
3 リニア岐阜県駅建設による開発
 JR中央線の美乃坂本駅付近にリニア岐阜県駅の建設が予定されており、現在、駅周辺の地域は、土地区画整理事業として開発が進められています。
 前回(令和3年3月)の視察時点では、事業地の立退きが進められている段階で、いまだ工事は開始していませんでした。今回の視察では、事業地がフェンスで囲われ、広範囲で造成工事が進められていました。
4 リニア高架橋の防音防災フード化
 リニアの計画路線を中津川市から西へ恵那市側に入った大井工区では、地上区間があります(第一大井トンネルと第二大井トンネルの中間地点にあたる岡瀬沢地区)。同地区の住民は、岡瀬沢高架橋について防音防災のためのフード化を求めていました。JR東海側は、当初、高さ2メートルの防音壁を設けると説明していましたが、住民側の粘り強い交渉の結果、令和4年6月11日には保安を理由に同高架橋のフード化を提案するに至りました。フード化であっても長閑な田園風景に異質な巨大建造物が建設されることは懸念点です。
5 濃飛横断自動車道建設による環境破壊
 リニア岐阜県駅開業に伴い下呂地方へ観光客を呼び込むとの触れ込みで、濃飛横断自動車道の建設が予定されています。
 しかし、建設予定地には希少なハナノキ等があり、また、地元住民からは、ホトケドジョウや近隣にあるオオタカの営巣する環境への影響が心配されています。
6 最後に
 今回は時間内に全ての視察予定地を見ることができませんでしたが、今後も継続して、工事状況や環境、生活への影響をフォローしていきたいと思います。