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シンポジウム「防ごう、投資被害!~金融教育の力で~」

会報「SOPHIA」令和5年3月号より

消費者委員会 委員 佐 藤 暢 高

1 はじめに
 令和4年4月1日から、学習指導要領の改訂により、高校の家庭科の授業で金融教育の内容が拡充され、資産形成の視点を取り入れた授業が行われることとなりました。民法の成年年齢の引下げにより、若者の投資被害が懸念される状況にあるところ、教育の観点から投資被害を予防するにはどうすればよいか議論を深めることを目的に、3月4日、金融教育に関するシンポジウムが開催されました。

2 第1部(基調講演)
 金融庁総合政策局総合政策課の渡邊裕美子氏から金融リテラシーと金融経済教育の重要性について講演していただきました。
 金融リテラシーとは①家計管理、②生活設計、③金融商品の選択・金融経済の理解、④外部知見の活用という4つの要素に基づく、金融や経済に関する知識や判断力をいいます。
 今日ではライフスタイルが多様化しており、いつ、どのくらいのお金が必要となるかは、各人のライフプランによってそれぞれ異なるので、金融リテラシーを身に付け、自ら備えることが不可欠となります。
 資産形成の授業では、自らのライフプランを実現するためには、どのような方法があるのかを知ることを目的としており、投資することを推奨したり、投資のテクニックを教えたりするというものではありません。

3 第2部(投資被害の実態)
 岩城善之会員からは、若者の消費者被害の件数は増加傾向にあり、その中でも副業や美容関連のトラブルの割合が高くなっていると報告がありました。また、SNSを通じた投資被害について、実際にあった事例を通じ、その実態を紹介いただきました。

4 第3部(パネルディスカッション)
 石川真司会員をコーディネーター、基調講演の渡邊氏、名古屋大学教育学部附属中・高等学校家庭科教諭の原順子氏、愛知県立明和高等学校家庭科教諭の髙梨知美氏、西口誠会員をパネリストとして、パネルディスカッションを行いました。
 渡邊氏から、学習指導要領改訂の経緯・背景をご紹介いただいた後、原氏及び髙梨氏から、授業で資産形成に触れることについて当初戸惑いがあったことや、生徒にどのように教えているか、投資を推奨しているとミスリードしないように注意しなければならないといった教育現場での悩みや、投資詐欺被害の実態については知らなかったといったお話しをいただきました。また、資産形成の授業での触れ方によっては、かえって投資詐欺に遭いやすくなるという懸念もあります。結局は、世の中にうまい話はないという当たり前のことを生徒にどう教えるかに尽きるのですが、西口会員から、資産形成の視点に触れる際には、投資を装った詐欺に遭わないように注意喚起をしてほしいとの要望が伝えられました。

5 最後に
 本シンポジウムには、教員・学校関係者、行政職員、教科書出版社、保護者、消費生活相談員等、弁護士以外にも多様な所属の方に、会場参加の他、WEBでは北海道から九州まで多くの方に参加をいただけました。参加者に実施したアンケートでは、金融教育の内容、学校の先生の悩みが知れてよかった、全国の家庭科の教員に投資詐欺の知識を共有して授業で必ずこの点について話をしてほしいと思った、被害事例の広報をより一層行う必要があるといった多数の回答が寄せられました。本シンポジウムをきっかけとして、当会と学校の先生方との継続的な交流を作っていきたいと考えています。