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【現地視察報告】 三重・答志島奈佐の浜における海洋ゴミ・プラスチック問題

会報「SOPHIA」令和4年12月号より

公害対策・環境保全委員会 委員 飯 島 吾 郎

1 海洋ゴミ・プラスチック問題とは

 海洋ゴミ・プラスチック問題と聞いて、皆さんはどのようなイメージをお持ちでしょうか。ウミガメ等の生き物が餌と間違えてプラスチックを食べてしまう、世界各地からの大量のプラスチックゴミが海洋を漂う、とイメージされる方が多いのではないでしょうか。しかし、海洋ゴミ・プラスチック問題は、私たちの身近な問題でもあります。公害対策・環境保全委員会では、伊勢湾における現状を知るために、11月14日・15日に、三重県鳥羽市の答志島へ現地視察に行きました。

2 答志島の現状

 鳥羽からフェリーに乗り答志島に向かい、奈佐の浜に向かいました。2週間ほど前に清掃活動がなされたとのことでしたが、それでもかなりの量の漂流物ゴミがありました。
 答志島は、伊勢湾から見て外海へ出る直前に湾を塞ぐような位置にあり、また伊勢湾側にある奈佐の浜は、湾内の潮流との関係で、湾内の漂流物のちょうど行き着く先に位置しています。伊勢湾沿岸の漂着ゴミは年間約12,000tと推定され、その1/4である約3,000tのゴミが奈佐の浜に漂着しているとのことでした。
 漂着ゴミの7~8割は木材等で、大小様々なプラチックゴミもありました。マイクロプラスチックは大きさが5mm以下(~1μm)のものとされています。奈佐の浜で確認できるプラスチックゴミの例としては、多様なプラスチック製品が断片化したものや、発泡プラスチック片、さらには、徐放性肥料プラスチックやレジンペレット、人工芝片等が確認できました。奈佐の浜に漂着するプラスチックゴミは、主として伊勢湾流域の河川から伊勢湾にもたらされたもので、国内(東海三県)での発生ゴミであることに特徴があります。そのため、当地域でのプラスチック等の使用を削減することは、伊勢湾及び奈佐の浜のゴミ削減に直接関係するといえます。

3 プラスチックゴミの問題点、伊勢湾の環境問題

 今回の視察では、四日市大学の千葉賢教授と、地元漁師であり22世紀奈佐の浜プロジェクト委員会の小浦嘉門さんに同行していただきました。奈佐の浜視察後、小浦さんからは、30年ほど前から奈佐の浜に漂流物が増え出したことや、台風などの災害時に伊勢湾に流れ込む漂流物が漁港に大きな被害をもたらしていること等を聞きました。
 千葉教授からは、伊勢湾内に流れ込んだプラスチックゴミが細分化され、魚介類が摂取することで、私たちも魚介類を介して石油化学製品であるプラスチックを体内に摂取する可能性があること、プラスチックの海洋への流入を防ぐためには、流入源に個別に対処する必要があること等の説明がありました。
 他にも、最近は漁獲量が減るなど、温暖化の影響が窺われるような話もありました。
 その後、鳥羽の旅館戸田家にて宍倉秀明支配人から戸田家の環境への取組みについて説明を受け、1日目は解散しました。2日目は、鳥羽リサイクルパークにてNPOとばリサイクルネットワークの中村孝理事長から鳥羽市における生ゴミの堆肥化処理事業の先進的取組みについてレクチャーを受けました。

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