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ー「相続」で「争族」とならないためにー

遺言の日記念行事
ー「相続」で「争族」とならないためにー

会報「SOPHIA」 平成29年4月号より

高齢者・障害者総合支援センター運営委員会 委員
岡 田 智 英

1 はじめに


 4月15日(土)に中日パレスにて遺言の日記念行事が開催されました。
 各地の弁護士会では、4月15日を「ヨイイゴン」という語呂にかけて「遺言の日」と定め、記念行事を開催しています。当会も、毎年、この時期に市民の方を対象に記念行事を開催しています。
 当会の今年の記念行事は、例年と同様に2部構成で実施しました。

2 第1部 基調講演(13:00~14:30)


 高齢者・障害者総合支援センター運営委員会の委員である安積孝師会員より、「『相続』で『争族』とならないために-遺言のすすめ-」というテーマの講演が行われました。
 ①遺言がない場合のリスク、②遺言書の作成方法及び③遺言書作成において検討すべき事項について、安積会員が実際に扱ってきた事件を踏まえた説明が行われました。
(1) 遺言書がない場合のリスク
 相続において争われる問題の1つとして、特別受益の問題があります。被相続人である親としては、生前、子らに平等・公平に財産的支援を行っているつもりでも、子らは互いに不平等感・不公平感を募らせており、相続の場面でその感情が顕在化し争いになることがあります。このような問題に対しては、遺言書において、各子らへの特別受益について、時期と金額を明示するとともに、持戻し免除の意思表示を記載しておくこと等で未然に紛争を防ぐ方法が説明されました。
(2) 遺言書の作成方法
 自筆証書遺言及び公正証書遺言の作成方法、メリット・デメリットの説明がなされました。
 一般の方が、自筆証書遺言を作成するにあたり、「全文、日付及び氏名を自書し、これに印を押」すこと(民法968条1項)は出来ても、「加除その他の変更」方法(同条2項)を間違えることはままあります。公正証書遺言は、手間や費用がかかりますが、自筆証書遺言の紛失や偽造変造等のおそれも踏まえると、弁護士としては公正証書遺言の作成を勧める旨の説明がありました。
(3) 遺言書作成において検討すべき事項
 遺言能力の問題に関しては、要介護認定が1つの目安にはなるものの、要介護度は認知症の程度だけではなく、身体的な症状の程度も考慮して認定されます。認定された要介護度が低くとも、認知症が進んでいる方もいらっしゃるため、要介護度が比較的低い方が作成した遺言についても遺言能力が争われるケースがあることに留意する必要がある等の説明がありました。
 遺留分の問題に関しては、遺留分を侵害する遺言書も有効ですが、後日、相続人間で遺留分侵害を巡る紛争が予測されるのであれば、遺留分への配慮も必要となります。ただし、遺留分の金額を具体的に設定する際には、各遺産をどのように評価するかという難しい問題があるとの言及がありました。

3 第2部 無料法律相談(14:40~15:50)


 当職が相談を受けた方は、遺言者から託された遺言書を持参されていました。しかし、その遺言書を拝見したところ、およそ遺言書としての体をなしていないものでした。今回の講演を聞いて弁護士等に相談していれば、このような遺言書が作成されることもなかったであろうと実感しました。