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空き家問題と法律

中部経済新聞令和4年12月掲載

愛知県弁護士会 弁護士 中村博太郎

 総務省統計局の調査によれば、空き家は増加傾向にあり、直近の平成30年における空き家の割合は14%弱とされています。空き家の増加を受けて、平成27年5月、空家等対策の推進に関する特別措置法(以下「特措法」)が施行されました。この特措法は、自治体に対し、積極的な空き家対策の措置を講じるよう促すもので、数多くの自治体が「空家等対策計画」を策定し、空き家対策に取り組んでいます。また、自治体は関係諸団体との間でも協力関係を築くべく協定を締結するなどし、現在、愛知県弁護士会も県内の12の自治体との間で、「空家等対策に関する協定」を締結しています。

 さて、一言に空き家問題と表現しても、相続に関する問題、管理に関する問題、相隣関係に関する問題などさまざまな問題がはらんでいます。そして、これらを時系列に整理すると、相続や管理のように空き家が生じる過程での問題、相隣関係のように空き家が引き起こす問題というように分類できます。視点を変えれば、相続や管理は主に空き家の所有者や管理者が抱える問題、相隣関係は主に近隣住民が抱える問題というように分類することもできるでしょう。さらに、空き家の増加は、犯罪を誘発しやすい環境を作ってしまうともいわれています。

 これら相続や相隣関係に関して、令和3年4月、民法等の一部を改正する法律が成立し、令和5年4月に施行される予定です。

 相隣関係にかかわる民法の改正について紹介します。たとえば、隣地の空き家の敷地に生えていた竹木の枝が越境してきた場合、従前であれば、自ら切除することはできず、所有者を探し当てたうえで切除するよう求めなければなりませんでしたが、法改正により、所有者を探し当てることができない場合には自ら切除することができるようになります。

 次に、相続にかかわる不動産登記法の改正について紹介します。たとえば、従前、相続登記は放置されがちでしたが、法改正により、相続により不動産を取得した場合、相続の開始があったことを知り、かつ、その所有権を取得したことを知った日から3年以内に相続登記の申請をしなければならなくなり、正当な理由なく申請を怠った場合には過料が課せられます。

 このように、空き家問題に対しては、特措法や民法、不動産登記法のほか、所有者不明土地の利用の円滑化等に関する特別措置法、相続等により取得した土地所有権の国庫への帰属に関する法律など、多数の法律の制定や改正により対処をしているところです。しかしながら、空き家の増加については法律では対処しきれません。少子高齢化、人口減少、過疎化、新築住宅の過剰供給などさまざまな原因が挙げられますが、これらを法律で対処しようとすると、国民の自由を制約することとなり困難です。これからも引き続き、空き家問題の対処について、法律だけでなく、経済、社会、環境などのさまざまな分野から取り組むことが必要となります。