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市民に頼られる紛争解決機関を目指して

紛争解決センターだより
市民に頼られる紛争解決機関を目指して

会報「SOPHIA」令和4年5月号より

令和3年度担当副会長 横 山 貴 之

1 愛知県弁護士会
 当センターは平成9年4月に設置され、令和4年3月末で丸24年を迎えました。「身近なトラブルお気軽に。」のキャッチフレーズのもと、これまでに5449件の申立てを受けています。
2 当センターの特長
(1)簡易・迅速・柔軟な手続です
①交通事故、賃料の増減額、貸金、売買代金、建物明渡等の定型的な事件については、HPから書式をダウンロードして簡単に申し立てることができます。②管轄の定めがありませんので、申立人や相手方の住所地が遠方である場合にも申立てが可能です。③あっせん・仲裁人が認めた場合には、弁護士会館以外の場所で期日を開催することが可能であるほか、電話による参加も可能となることがあります。
(2)専門的な紛争へも対応可能です
①弁護士あっせん・仲裁人と共にあっせん・仲裁にあたる、多数の専門家あっせん・仲裁人(カウンセラー、不動産鑑定士、建築士、土地家屋調査士、公認心理師、国際商事関係、社会福祉士、IT関係等)がいらっしゃいます。②主に医療事件において、あっせん・仲裁人に専門的知見を提供していただく専門委員として、各診療科の医師54名と歯科医師7名(4月1日現在)がいらっしゃいます。専門分野や事件の当事者等との関係で、名簿に登載されている専門委員の関与が難しい場合には、あっせん・仲裁人や当事者の意見も聴いた上で、名簿に登載されていない医師等に新たに専門委員への就任を依頼することもあります。
(3)認証ADR機関です
 当センターは、ADR法に基づく法務大臣の認証を取得していますので、時効の完成猶予効、調停前置の不適用、訴訟手続の中止等の効果が認められます。
(4)執行力の付与が可能です
 名古屋簡裁及び名古屋家裁との間で、それぞれ即決和解、即日調停の利用に関する取り決めをしていますので、成立した和解について執行力を付与することができます。
3 令和3年度の概況
(1)新規受理件数は、本会、西三河支部、一宮支部の合計で128件であり、2か月間センター業務を停止した前年度よりも23件の減少となりました。なお、これまでに上記128件のうち16件が和解で終了しています。
(2)前年度に引き続き、ハーグ条約事業、英国・リユナイト、シンガポールSMCとの二国間共同調停事業を受託しました。
4 今後の展望
 令和4年度の中心課題は、期日のリモート開催を可能にするための規則改正です。また、紛争解決センターの根幹となるあっせん・仲裁人のより一層の拡充や、災害ADRの実施、紛争解決センターに親しみやすい愛称をつけること等も検討されています。併せて、会員や市民にセンターの魅力を一層PRする活動にも積極的に取り組む必要がありそうです。
5 最後に
 担当副会長として終了事件の記録確認作業に携わる中で、申立人と相手方の主張の開きが大きく、一見すると和解が非常に困難であろうと思われる事件であるにも関わらず、和解によって終了した事件を少なからず目にしました。当事者の主張にじっくりと向き合い、熱心で粘り強い手続運営によって和解に導いてくださるあっせん・仲裁人の先生方や、紛争解決に向けて専門的知見の提供という形で協力してくださる専門委員の方々のご尽力に改めて御礼を申し上げます。