愛知県弁護士会トップページ> 愛知県弁護士会とは > ライブラリー > 犯罪被害者支援連載シリーズ99 愛知県に犯罪被害者等を支援する条例ができました!

犯罪被害者支援連載シリーズ99 愛知県に犯罪被害者等を支援する条例ができました!

会報「SOPHIA」令和4年6月号より

犯罪被害者支援委員会 副委員長 塚 田 聡 子

1 制定までの経緯

 愛知県犯罪被害者等支援条例が制定され、4月1日に施行されました。

 これまで愛知県は、「愛知県安全なまちづくり条例」(2004年施行)の中に犯罪被害者等の支援を位置づけてきました。しかし、被害者支援に関する条文はわずか3つであり、被害者に対する支援として「情報の提供、助言」のみしか明記されていないなど、不十分であることは否めませんでした。

 そこで、2021年に「あいち地域安全戦略2023」を策定し、犯罪被害者等の支援を重要施策の1つとして掲げるとともに、犯罪被害者等の支援条例(被害者支援に特化した条例、いわゆる「特化条例」)が制定されました。当委員会でも昨年11月に「~県が犯罪被害者支援条例(特化条例)を制定する意義と、制定後の運用の課題~」のテーマでミニシンポジウムを開催しました。

2 本条例に特徴的な内容

 本条例の特徴として、まず、①基本理念(3条)に、犯罪被害者等を社会から孤立させないことを明記した点が挙げられます(同条2号)。本人が望めばいつでも手を差し伸べる準備ができている、という姿勢を示したものです。

 また、②犯罪被害者等が周囲の理解や配慮に欠ける言動によって受ける「二次被害」や、加害者からの報復等更なる犯罪等により受ける「再被害」を防止し、犯罪被害者等の「安全を確保」するための施策が規定されています。例えば、犯罪被害者等に関する個人情報の適切な取扱い(二次被害の防止)や、一時保護、施設への入所による保護(再被害の防止)等です(12条)。

 さらに、③犯罪被害者等の支援に従事する者に対して、犯罪被害者等の個人情報を適切に管理するよう求めることにより(19条)、犯罪被害者等が「自分の情報が漏れることはない」と、安心して県及び関係団体に相談できるようにしています。

3 その他の内容

 本条例では、犯罪被害者等が受けた経済的負担の軽減を図るため、必要な施策を講ずるとされています(15条)。

 その具体化として、条例施行に先行して、見舞金制度が設けられました。遺族見舞金をはじめとする見舞金や、遺児支援金のほか、被害者が加害者に再提訴するための費用を助成する制度もあります。判決で加害者に損害賠償が命じられても、賠償が行われないまま消滅時効が成立しようとしている場合、被害者は再提訴する必要がありますが、これを助成する制度です。

4 今後の課題

 本条例では、犯罪被害者等支援に関する施策の総合的かつ計画的な推進を図るための指針を定めるものとしており(8条)、今年度指針策定検討会議の開催が予定されています。この指針に充実した具体的施策を盛り込んでいくことが必要です。

 また、愛知県で犯罪被害者等の支援に特化した条例ができたのは喜ばしいことですが、県内の市町村で特化条例が制定されたのは名古屋市と大府市のみです。県内のどこにいても、被害者が平等に支援を受けられるようにする必要があります。

 県は、本条例についての市町村向けの説明会のなかで、他の市町村においても特化条例を制定することが望ましいという話をするそうです。

 当委員会も、他の市町村に特化条例の必要性を説明し、条例制定に向けて積極的に働きかけていきたいと考えています。