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 ~罪に問われた人の社会復帰と再犯防止へ~

よりそい弁護士制度で150件の支援(12月掲載)
 ~罪に問われた人の社会復帰と再犯防止へ~

中部経済新聞令和3年12月掲載

弁護士 田原裕之

 職を失い、食べるのにもこと欠き、コンビニでおにぎりを万引きしてしまった。私たち弁護士は、こんな窃盗事件を担当することがある。軽微な窃盗で初犯であれば、起訴猶予、それが重なると、罰金、公判請求されて執行猶予、そして実刑(刑務所で服役)。この繰り返しで刑務所と一般社会を行き来する人生を送る人もいる。

 従来の弁護士の活動は、こうした刑事事件を担当することで終わっていた。しかし、ここで終わっていいのだろうか。その人の社会復帰や再犯防止のための活動に当たることも弁護士に求められているのではないか。そうした活動を行っている弁護士もいたが、ボランティアだった。

 愛知県弁護士会は、2019年度からこうした活動に一定の費用を支払う制度を開始した。「よりそい弁護士」制度である。兵庫県に続いて、全国2県目の開始で、この11月からは札幌弁護士会も制度を発足させた。今年で3年目、既に150件を超える支援を行ってきた。

 執行猶予判決を受けた後、保護観察所や生活保護窓口に同行して手続を手伝う、刑務所出所後の帰住先や入院先を刑務所担当者と協力して手配する、こうした活動を行っており、支援を受けた人からは、これからの人生に手応えを感じているというような感想が寄せられている。

 この分野は、刑務所や保護観察所、地方公共団体、福祉関係者、NPO団体などとの連携が必要であり、そちらの方々の方がプロである。私たち弁護士は、それらの方々のネットワークの一員として活動している。対象者と一貫して関わっていけるというところに特色があるだろう。また、借金や身分関係の整理など、弁護士でなければできない支援もある。

 こうした活動によって、その人が社会の中で普通に暮らすことができれば、その人の人生が希望の持てるものになるにとどまらず、再び犯罪の被害者を出すことなく、安心して生活できる地域社会つくりにも結びついていく。「持続可能な開発目標」(SGDs)でも政府の「再犯防止推進計画」(平成29年12月)でも「誰一人取り残さない社会」の実現が掲げられている。社会の中では、「犯罪を犯した人」となると、「怖い」イメージがあり、仕事や住居を見つけるにもハンディがある。彼らが社会復帰を成し遂げ、再犯に至らないためには、地域社会に共生する皆さまのご理解、ご協力が不可欠である。私たち弁護士は罪に問われた人の社会復帰、再犯防止のための活動に力を入れていきたいと考えている。