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日米地位協定と米軍基地問題
 ~〝沖縄化〟する日本~

連続憲法講座第3回
日米地位協定と米軍基地問題
 ~〝沖縄化〟する日本~

会報「SOPHIA」令和3年10月号より

憲法問題委員会 委員 篠 原 宏 二

1 はじめに

 沖縄国際大学大学院の前泊博盛教授に、「日米地位協定を日本国憲法から検証する」と題して、日米地位協定と米軍基地問題についてご講演をしていただきました。

 前泊教授は、長年琉球新報の記者として活躍された方で、「本当は憲法より大切な『日米地位協定入門』」(編著、創元社)等の著書があり、沖縄の米軍基地問題等につき、精力的に発信をされています。

 当日は、一般の方は、会場及びZoomで参加され、前泊教授のご講演もZoomの中継で行われました。

2 前泊教授の講演

 前泊教授からは、日米地位協定によって、日本の主権が侵害されているとして、以下のような説明がされました。

 まず、日本の飛行機は、航空法の規制により、安全のために、最低高度が定められていますが、米軍機は、航空法の規制がなく、全国を自由に低空飛行することができます。

 アメリカでは、住宅地上空の低空飛行は禁止されています。また、他国の地位協定との比較でいえば、イタリアにおいては、空はイタリアのものとして、米軍機の低空飛行は事実上禁止されています。

 米軍機による爆音被害があっても、裁判所は、第三者である米軍の飛行を規制する権限は日本政府にはないとして、損害賠償は認めても、飛行禁止は認めません。

 米軍基地の使用については、環境条項がなく、汚染物質の規制がされておらず、沖縄の米軍基地周辺で、化学物質であるPFOSやPFASによる水質、水源汚染も報じられています。

 犯罪起訴率は、日本人が約49%、米兵が約17%で、法の下での不平等が生じています。

 米軍機が、墜落等の事故を起こしても、日本が、所在地のいかんを問わず米軍の財産について捜索または差し押さえを行う権利がないため、現場を米兵により封鎖され、日本は事故調査を行うことができません。これについては、2004年8月に沖縄国際大学に米軍ヘリが墜落したときにも問題となりました。

 このような日米地位協定の問題は多くは沖縄で問題とされていますが、本土でも問題となるものであるとの説明もありました。

 例えば、首都圏の上空は、「横田ラプコン」と呼ばれる米軍の巨大な支配空域となっていて、上空を制圧されています。

 また、北方領土問題において、ロシアが返還に消極的なのは、日本が米軍基地の建設を拒否できないことになっているからとの話もありました。

3 さいごに

 前泊教授は、元新聞記者らしく熱く問題を語られました。

 アンケートでも、沖縄や地位協定のことなど知らないことが多かったが、知ることができてよかったとの回答も多くありました。

 日米地位協定については、本土に住む私たちは、その問題をあまり理解していないことが多いと思うのですが、本講演により、その問題点や、それが本土においても問題でもあることなどがよく分かり、とても有益でした。