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シンポジウム「『超』監視社会がやってきた」がやってきた!

会報「SOPHIA」 平成29年2月号より

情報問題対策委員会 委員 河 村 隆 司

2月4日、当会会館にて、標記シンポジウムが開催された。
 まず、フリージャーナリストとして、これまで約20年にわたり、国民のプライバシーを侵害する監視社会の問題に取り組んできた斎藤貴男氏に、「マイナンバーと監視社会」と題して、講演いただいた。斎藤氏からは、国民総背番号制の構想からマイナンバー制度へと繋がる日本社会の監視強化の現状が語られた。
 そもそも国民が求めたのでなく政府が勝手に付けた番号を「MY」ナンバーと呼ぶこと自体が屈辱的であり、その本質は「STIGMA」(奴隷の烙印)ナンバーであるというくだりは、監視強化に対する危機意識を見事に表現している。また、マイナンバー制度のモデルとされるエストニアは、先進的なIT国家であるが、旧ソ連の一員であり、要するにKGBによる国民監視に連なるものであるという点や、日本国民の意識として、お上(政府)から監視されることへの抵抗感が少なく、それがマイナンバー制度の導入を許してしまったという点は、なるほどと思わせた。
 次に、日弁連情報問題対策委員会副委員長の武藤糾明弁護士に、「『防犯』カメラと監視社会」と題して、講演いただいた。武藤氏からは、警察によるプライバシー侵害の違法捜査を問題とする訴訟などでの具体的活動を通じて知悉している監視強化の実態及びその危険性が、法律家らしい理路整然とした語り口で述べられ、その冷静沈着な様子が監視社会の恐怖を連想させた。
 顔認証システムの技術の進展は著しく、特定人の行動履歴を検索できるようになっているのに、その画像をデジタルデータとして、何らの法規制もなく、警察が収集していることは問題であるという点は、もっともである。
 斎藤氏、武藤氏をパネリストとし、濵嶌将周当委員会委員長がコーディネータを務めたパネルディスカッションでは、議論はさらに秘密保護法や共謀罪にまで広がった。
 両パネリストからは、権力側による実際の監視もさることながら、そうでなくても監視を意識してモノが言えない空気が社会全体に広がってしまうことが問題だとの指摘があり、マイナンバー制度、監視カメラ網、秘密保護法、共謀罪などがすべて結びついた「超」監視社会の恐ろしさを想像させた。

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 閉会の挨拶を述べた日弁連情報問題対策委員会副委員長の新海聡会員からは、プライバシーの保護が民主主義の発展にどれほど重要かが改めて指摘され、大きな拍手と共に本シンポは終了した。
 当日は、会場である当会会館5階ホールがほぼ満員となるほど盛況で、また、パネルディスカッションで利用するために配布した質問用紙には相当数の質問が書き込まれるなど、この種の問題に対する危機意識の高い一般市民がかなりいることを実感した。他方で、会場を見渡すと参加者の年齢層は比較的高く、ブログやSNSなどで自身のプライバシーに関わる情報の発信に積極的な世代とのギャップを感じた。