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中津川市リニア建設の環境に対する影響調査のための視察

会報「SOPHIA」 令和3年 4月号より

公害対策・環境保全委員会 委員 飯島吾郎

1 はじめに

 3月3日、当委員会は、リニア建設の環境に対する影響調査のため、岐阜県中津川市美乃坂本へ視察に行きました。

 本視察は、地元住民の有志らで組織するリニアを考える岐阜県民ネットワークによる要請に当委員会が応じたものであり、国家規模の公共事業であるリニア中央新幹線の建設工事に伴う環境影響を調査する目的があります。

2 視察の概要

 はじめに、地元の公民館で地元住民から中津川市におけるリニア建設工事の現状と同工事による環境負荷について説明を受け、その後、各工事現場付近への視察に行きました。

 建設残土の処理場、斜坑掘削工事現場、リニア岐阜県駅(仮称)建設予定地を見て回りました。

3 リニア建設残土の問題

 トンネル工事により出される残土について処分場の確保が進まない状況で進められています。

 また、岐阜県東部にある地質帯には、カドミウムやヒ素、重金属である黄鉄鉱、さらにウラン鉱等の有害物質が含まれていることがわかっており、中津川市のリニア建設から出る残土の処理や含有有害物質の検査が適切に行われているかに注目が集まっています。

 地元では、中津川市内で処理されるリニアの建設残土は、中津川市内のリニア建設工事から出たものに限定している、と事業者側から説明を受けています。しかし、以前に、市内各地にある残土処理場に持ち込まれる残土の処理計画が、地元への事前説明もなく変更されたという経緯から、地元には事業者側への不信感がありました。また、環境影響評価書では、汚染残土対策に触れておらず、住民への説明も不十分なため、住民は事後的に既成事実を知らされていました。

4 ため池の調整池への変更の問題

 リニア中央新幹線の車両基地となる中部総合車両基地予定地も中津川市内のリニア建設残土の処分地の一つですが、その付近にあった農業用ため池を車両基地からの排水用の調整池と兼用するための改修工事が行われました。また、隣接した場所で、有害物質を含む要対策土の恒久処分地も造られるとのことでした。処分地は二重の遮水シートで覆う予定とのことでしたが、それ以外には、農業用ため池の汚染を適切に防止するための対策の情報は今のところありません。そのため、ため池の直下に広がっている田畑に車両基地からの排水や要対策土による汚染水の影響が及ぶ危険性も考えられ、今後の動向が心配です。

5 残土運搬用ダンプカーの往来の問題

 リニア建設残土の運搬のため、中津川市内では、1日計2,250台のダンプカーの往来があるとの説明がありました。

 これらのダンプカーは、歩道のない通学路を往来することもあるため、通学児童らの安全確保の問題があります。

 また、ダンプカーの往来による道路付近の騒音・振動や大気汚染による健康被害の発生の懸念も生じています。

6 最後に

 中津川市では、今後、JR中央線の美乃坂本駅付近にできる、約1kmの高架線及び高さ約30mの巨大なリニア岐阜県駅(仮称)を中心に区画整理も進められます。このような開発が地域の環境にどのような影響を及ぼすのか、今後の動向を注視していく必要があります。