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~現状と課題、そして弁護士の関わり方~

犬山城下町のにぎわいを作り出した法制度
~現状と課題、そして弁護士の関わり方~

会報「SOPHIA」 令和3年 4月号より

公害対策・環境保全委員会 副委員長 家田大輔

1 当委員会の歴史的景観等調査について

 地域は、歴史的関係性や文化的関係性等様々な関わりから成り立ち、その場所で人々が築いてきたその町らしさがある。

 当委員会は、その町において築かれてきた歴史的景観を地域資源としたまちづくりを支える法制度や行政、民間の活動そして弁護士の関わりの可能性について2015年度から継続的に調査している。2020年度は2月17日に犬山市の城下町について調査した。

 本調査は、地域における歴史的風致の維持及び向上に関する法律(以下「歴まち法」という)に基づくまちづくりの成果と課題、そして弁護士の関わりの可能性が主な調査目的である。

2 歴まち法制定以前

 歴史的まちづくりは当たり前にある考えではない。歴史と文化を守ることと、まちづくりは相反するものと考えられていた時代もあった。犬山市でも歴史的な町割を分断する形で計画幅員16mの都市計画道路3路線が決定され、1996年には東西に横断する形で決定された1路線について事業着手の表明がなされた。この時に、住民から問題提起がなされ、住民と行政の議論が行われ、都市計画が見直されたことがあった。このように犬山城下町は開発と隣り合わせにおかれ、かろうじて残された。

3 歴まち法の成果

 2008年に歴まち法が制定され、国が文化財等を歴史的資産と位置づけ、それらを核にした歴史まちづくりの基本的な指針を示したことが、犬山市をさらに動かした。犬山市は2009年3月に歴まち法に基づく歴史的風致計画を作成し、国の認定を受けた。その後、10年が経過した2019年から第2期計画に入っている。

 犬山市は歴史的風致計画に基づき、道路の美化や電線の地中化、歴史的建物の整備や修景等城下町の景観向上を図った。これらの取組により城下町の町並みの景観が向上し、市民の活動を後押しした。今回の調査では、登録有形文化財の旧堀部家住宅を見学したが、この建物は修景や改修が行われ、現在は民間が建物を管理し、利用している。このような歴史的景観が地域資源となって多くの観光客を呼ぶようになり、城下町ににぎわいが生じている。

4 課題

 しかし、景観がビジネスに関わると逆に景観を阻害することがある。例えば、店舗が観光客受けする店構えをすることで、城下町の景観が害されることがある。これに対し、景観計画や景観条例もあるが、努力規定に留まっており、実効性に限界がある。また、屋外広告物ガイドラインも効力が弱い。

 また、時の経過により世代交代が生じてくるが、行政内部において意識の継続性、民間においては活動の継続性や、歴史的建造物の維持の問題もある。

5 弁護士の関わりの可能性

 本調査では、犬山市と課題に対する意見交換もした。弁護士の関わり方は、行政に対しては、制度設計への助言、特に条例制定支援や計画立案の際に審議会の委員として関わること等の可能性がある。また民間に対しては、活動の法的支援や助言、行政と民間活動の橋渡し等が考えられる。当委員会においては、令和3年度以降も、歴史的景観等調査を続けていく予定である。