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コロナ時代の国際ビジネスと戦略的国際法務(4月掲載)

「大胆かつ慎重に」挑戦を
コロナ時代の国際ビジネスと戦略的国際法務(4月掲載)

中部経済新聞令和3年4月掲載

愛知県弁護士会弁護士 野田雄二朗

 最初の緊急事態宣言の発令から既に1年が経過したが、なおも新型コロナウィルスの蔓延(まんえん)は終わりが見えない。このような時代に国際ビジネスを積極的に推進する余裕などない、という声も聞こえてきそうである。しかし、すでに構築された国際的な物品・サービスの商流自体は決して止まることはないし、長期的な視点では経済の国際化の潮流は避けられない。

 国際ビジネスに取り組むということは、コロナ時代の今だからこそしっかり取り組むべき課題である。そこでは、「大胆かつ慎重に」がキーワードである。国際ビジネスという場合に「海外展開しなくても事業はまわる」「英語・外国語がわからない」「人脈がない」という理由で二の足を踏む企業は多い。しかし、大胆に「国際ビジネスは宝の山だ」と無理にでも思い込んで欲しい。他方で、弁護士として中国を中心とするアジアに展開するビジネスのサポートを行ってきた筆者の経験からすれば、ただの勢いや相手方の誘いのままに国際ビジネスをすすめると、手痛いしっぺ返しをくうというのが実感だ。

 弁護士の扱う法務の分類として、臨床法務・予防法務・戦略法務というものが一般に知られる。臨床法務とは、一般的にイメージされる裁判をはじめとするトラブル処理の法務である。予防法務とは、契約書のチェックなどに代表される、紛争の発生をあらかじめ予防する法務のことをいう。そして戦略法務とは、今後発生するメリット・デメリットを見通して、どのような法的スキームを採用することがもっとも戦略として有利かを検討するものである。

 こと国際ビジネスに関しては戦略法務が非常に重要である。例えば中国企業が貴社の製品が優れており、中国国内でも高い需要が見込めると提携を申し入れてきたとしよう。秘密保持契約を締結した上で、必要十分な情報のみを相手方に提供するという予防法務的視点は重要だ。しかしより重要なのは、例えば現地の工場に製造委託をするのか、技術援助まで行うのか、あるいは合弁・単独で現地法人を作って生産するのか、単なる輸出とするのか、その際に商社を介在させるのかなど、国際ビジネスの検討と同時に戦略的法務の視点を持つことである。

 われわれ愛知県弁護士会は、大胆かつ慎重に国際ビジネスに挑戦する企業の良きパートナーとして、戦略的法務の視点からサポートし続けたい。