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名古屋拘置所の状況

死刑事件についての勉強会
名古屋拘置所の状況

会報「SOPHIA」令和2年11月号より

死刑制度廃止委員会 委員 市 川 哲 宏

 死刑確定者が収容されている名古屋拘置所の状況について、名古屋拘置所視察委員会委員の中村勝己会員から報告がなされた。

【刑場の見学】

通常毎年5月の視察委員会において、本庁舎の見学を行うが、現在、刑場については見学させてもらえない運用とのこと。刑場の場所も分からないとのことであった。

【死刑確定者の収容者数】

1023日の照会時点での死刑確定者の収容者数は、合計11人(男性10人、うち外国籍1人、女性1人)とのこと。

【死刑確定者の最長及び平均収容期間】

最長収容期間は28年2月18日(ただし、未決【犯罪の容疑で勾留されてから、裁判所の判決が確定するまでの期間】勾留期間を含む)、平均収容期間は統計をとっていないため不明とのこと。

【死刑確定者の処遇】

 刑事収容施設法32条にて「死刑確定者の処遇に当たっては、その者が心情の安定を得られるようにすることに留意する」よう定められていることを踏まえて、名古屋拘置所に複数の質問をした結果、以下のとおりの回答があった。

①食事、就寝その他の起居動作をすべき時期についての未決拘禁者との違いの有無、②死刑確定者における、余暇時間の横臥の許可の必要の有無については、未決拘禁者と同様で違いが無く、横臥には許可が必要との回答、③自弁(自ら費用を負担すること)での購入できる物品についての未決勾留者との違いの有無、④自弁での書籍の購入についての未決拘禁者と比較しての制約の有無、及び⑤筆記の時間における未決拘禁者と違いの有無はあるかについても、未決拘禁者と同様との回答とのこと。

⑥屋外での運動について、未決拘禁者との違いの有無があるかについては、未決拘禁者と同様で、屋外運動の時間は1回30分とのこと。⑦趣味・娯楽についての未決拘禁者との違いの有無(特にDVD視聴やテレビ視聴の可否)については、未決拘禁者は、DVDもテレビも視聴できないが、死刑確定者は日曜日にDVDの視聴を認めており、テレビの視聴はできないとのこと。⑧外部交通としての親書の発受や面会に関して、しばしば死刑確定者から公官庁に対して文書公開等が行われることの対応状況については、刑事収容施設法139条ないし142条に基づいて適正に対応しているとのこと。⑨医療上の対応状況、特に精神面での対応については、死刑確定者の拘禁が事実上相当程度長期間に及ぶこと、独居等を含む拘禁反応に対する医学的側面から何等かの工夫をしている点があるかについては、格別なものは無く、必要に応じて精神科医が診察するという点で、未決拘禁者と同様であり、死刑確定者に限って、特に精神科医が定期的に診察するということはしていないとのこと(なお、精神科医は常勤医務官である)。⑩上記以外に死刑確定者に対して特に配慮している点については、格別のものはないとの回答であった。

【死刑確定者の収容場所及びその他の事項】

 死刑確定者は、未決拘禁者と同様の動作時限であるため、未決拘禁者を収容する棟に収容しており、1か所には集めておらず、居室は不定期に変更するとのこと。

 その他、参考として、1110日現在、名古屋拘置所は、総員635名(定員1000名)、未決357名(定員743名)、既決278名(定員257名)を収容している状況とのこと(既決の定員オーバーは、コロナ禍等で刑務所の受入れが遅れていることが原因)。