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種苗法による農林水産植物の保護

ためになる実務
種苗法による農林水産植物の保護

会報「SOPHIA」 平成29年1月号より

司法制度調査委員会 委員 野 中 光 夫

はじめに

 近年、日本料理や日本の農林水産物は海外で高い評価を受けています。また、欧州を中心に構築されてきた地理的表示保護制度の日本での導入がなされ、農林水産物にかかわる知的財産の保護の必要性が高まっています。そこで、今回は、今まで、知的財産分野においても、あまり馴染みのなかった植物新品種の保護制度(種苗法)について紹介します。

種苗法の概要

 種苗法は、一定の要件(登録要件)を備えた農林水産植物の新品種の育成をした者又はその承継人に、出願及び審査手続を経て品種登録がなされることにより、育成者権という特許権同様の権利を与え、新品種の育成の振興等を図り、農林水産業の発展に寄与することを目的とするものです。

登録要件及び育成者権の存続期間

 種苗法による品種登録を受けるためには、①区別性、②未譲渡性(①は他の品種による非公知性、②は当該品種自体による非公知性で、①②を合わせて特許の新規性に類似した要件となります)③均一性(同一世代にある植物体全てが重要な形質に係る特性の全部において十分に類似していること)、④安定性(何世代増殖を繰り返しても重要な形質に係る特性の全部が安定していること)及び⑤名称の適切性(品種の名称が既存の品種や登録商標と類似しないことなど)の登録要件を満たす必要があります。そして、これらの要件を満たし品種登録されれば、育成者権が発生し、その存続期間は、品種登録の日から25年(果樹等の木本は30年)です(ただし、平成10年12月法改正前の登録品種は15年(木本は18年)、平成17年6月法改正前の登録品種は20年(木本は25年)です)。
 なお、品種登録は、アイデアではなく品種自体を保護するものであることから、登録時に有していた均一性・安定性を喪失することがあり、その場合は、存続期間にかかわらず事後的に登録が取り消されることとなります。

育成者権の範囲

 育成者権の範囲は、登録品種及び当該登録品種と特性により明確に区別されない品種に及び、育成者権者は、その範囲の品種を業として利用する権利を専有します。なお、育成者権者は、従属品種及び交雑品種に対しても一定の権利を有しています。

育成者権の制限

 育成者権は、特許権同様、「業として」ではない私的利用、試験・研究目的での利用に対しては権利が及ばず、特許権との調整のために制限されているほか、農業者が育成者権者等から譲渡を受けた登録品種の種苗を用いて得た収穫物を自己の農業経営において更に種苗として用いて収穫物を得る行為、いわゆる農業者による自家増殖に対しても権利が及びません。これは、農業者による自家増殖の実情を考慮したものですが、自家増殖にかかる権利制限は、徐々に縮小される方向にあります。

権利侵害に対する対応(まとめにかえて)

 育成者権の侵害については、特許権等と異なり、品種保護Gメンなど行政が積極的に関与してきました。しかし、農林水産物の知的財産保護の強化や農業者による自家増殖に対する権利制限の縮小により、今後、我々弁護士が関与する機会も増えるものと思われます。