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名古屋拘置所との懇談会

会報「SOPHIA」令和2年9月号より

名古屋拘置所との懇談会 刑事処遇に関する委員会 委員長 川 本 一 郎

1 はじめに

 8月19日、名古屋拘置所との懇談会が開催されました。平成2年から継続して行われていますが、今年はコロナ禍のため、例年併せて行っている拘置所内見学を省略し、懇談会のみの実施とすることで無事開催に至りました。当会からは、担当副会長と、刑事処遇に関する委員会、人権擁護委員会、刑事弁護委員会、死刑制度廃止委員会の委員合計16名が参加しました。

2 平成31年(令和元年)の収容状況

 収容定員は1000名で、男女別では男性937名に対し女性63名、居室の種別では単独室627名に対し共同室373名です。

 平成31年の被収容者は12月末時点において全体で565名で、うち未決が331名、既決が234名とのことで、昨年の被収容者数より約100名増加しています。ただし、既決234名の大半は刑務所への移送待ちで、その移送がコロナ禍の影響で遅れているという事情はあるようです。未決の居室種別では、単独室収容者が264名に対し共同室が67名です。

 外国人収容者は49名、13か国の外国人が収容されており、現在はベトナム人とブラジル人が多いとのことです。面会の際の外国語対応としては、7か国語が通訳可能です。

 死刑確定者は懇談会時点で11名収容されており、1日のスケジュールは未決の被収容者と同様で、運動についても未決同様1日30分の戸外運動ができるとのことです。死刑確定者を収容するための特別な設備のようなものはなく、未決と同じ構造の居室に収容されているとのことでした。

3 施設内医療について

 医療体制としては、常勤医師3名(呼吸器科、内科、消化器科それぞれ1名)、非常勤医師6名(外科3名、精神科1名、眼科1名、歯科1名)、放射線技師1名、薬剤師2名(うち常勤は1名)、看護師1名、准看護師資格を有する刑務官7名がおり、平成31年に診療を受けた被収容者数は延べ4702名でした。

 また、外部医療機関に入通院した延べ人数が、入院41名、通院90名いました。ただし、疾病により勾留又は刑の執行が停止された例はありませんでした。

4 性的マイノリティへの対応

 平成23年6月1日の通達に従い、他の被収容者と分けて個別に対応しており、MtF(男性から女性への性別移行希望者)については外形が女性であれば女性職員が、FtM(女性から男性へ性別移行希望者)については外形にかかわらず女性職員が対応しているとのことでした。

5 新型コロナウイルスへの対応等

 名古屋拘置所では懇談会時点で職員・被収容者ともに新型コロナウイルス感染者はゼロとのことでしたが、普段からの感染症対策としてマスク・手指の消毒・新規収容者は2週間は単独室に置くなどの対応をしており、コロナ禍以降は職員の検温やテレワークの利用、公共交通機関の利用を控えるなどの対応をしているとのことでした。

6 刑事弁護活動への対応

 現状、接見前に刑事記録を差し入れても、そのまま接見時に刑事記録を持たせることができない運用になっている点については、翌日が公判期日等相当の事情があれば例外を認めており、その例外も今年春から広げているとの回答でした。

 検察官請求証拠にDVDがある場合の対応については、現状は接見時に弁護士側から再生して見せるしかなく、DVDを差し入れても本人に交付できないので、居室内等で被収容者自身に見てもらう方法はないとのことです。