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体制の充実が進む紛争解決センター
~災害ADRを準備中です~

紛争解決センターだより
体制の充実が進む紛争解決センター
~災害ADRを準備中です~

会報「SOPHIA」令和2年5月号より

令和元年度担当副会長 黒 澤 佳 代

1 はじめに

当センターは、5000件超の取扱実績がある、当会が全国に誇れる紛争解決機関です。

しかし、新型コロナウイルス感染症の拡大に伴い、現在は、あっせん業務が休止され、新規受付も停止された状況にあります。1日も早く終息し、再び当センターが紛争解決に貢献できるようになることを望みます。(※令和2年5月執筆時点。同年6月15日に再開)

2 当センターの特長

(1)簡易・迅速・柔軟な手続

ア 調停の場合には、管轄の定めにより、遠方の相手方住所地に申し立てなければならない場合にも、当センターなら申立可能です。

イ 定型的な申立書式は、HPからダウンロードでき、事案によっては、「相当な解決を求める」といった記載も可能です。

ウ 期日の開催も、あっせん・仲裁人の判断のもと、時間や場所を柔軟に設定することが可能であり、電話会議の方法もありえます。

(2)複雑・専門的な紛争にも対応

医療案件等の専門的な紛争にも対応しています。事案によっては、専門家あっせん人(建築士、不動産鑑定士、土地家屋調査士等)や専門委員(医師、歯科医師)が加わることもあります。

(3)認証ADR機関としての法的効果

当センターは、法務大臣の認証を得ていることから、ADR法上、あっせん手続について、①時効中断効、②審理継続中における訴訟手続の中止、③調停前置主義の特則の法的効果が付与されています。

(4)執行力付与のための工夫

分割弁済を合意した和解成立事案について、名古屋簡裁と即決和解、名古屋家裁と即日調停の利用に関する取決めをしており、執行力の確保を図っています。

3 令和元年度の動き

(1)令和元年度(平成31年4月1日から令和2年3月31日まで)の受理件数は、本会、西三河支部、一宮支部合計で202件でした(平成30年度より、一宮支部を期日の開催場所とする運用が本格的に実施されています)。

(2)5年越しで取り組んできた規則の全面改正作業が完了し、従来8つに分かれていた規則を1つの運営規則にまとめて制定し直し、細則の改正も行いました。

(3)国際家事ADRについては、令和元年度も、外務省からハーグ条約事業を受託するとともに、イギリスのADR機関リユナイト及びシンガポール調停センターとの各二国間共同調停事業を、平成30年度に引き続き、受託しました。

(4)大規模災害発生時に、地元弁護士会が災害ADRを設置する事例が定着していることから、当センターにおいても、平時からの備えとして、令和元年度初めに、災害ADRチームを設置して、検討を始めることとしました。

4 最近の動き・災害ADRを準備中

新型コロナウイルス感染症対応として、政府から緊急事態宣言が発出され、それが延長される深刻な事態に至っています。今後、困窮する人や様々な紛争が生じてくるとの懸念を抱かざるを得ません。当センターとしても、あっせん業務再開後は、紛争解決に向けて、迅速、的確に対応できる体制が必要だと思います。当センター運営委員会では、現在、「大規模災害」には、感染症の蔓延をも含むものとし、申立時の手数料やサポートについて通常手続の特則を設け、より利用しやすく、申立てをサポートできる手続(災害ADR)を、検討、準備中です。(執筆時点)