会報「SOPHIA」 平成30年9月号より

法科大学院委員会 副委員長 山 﨑 拓 哉

1 模擬接見の開催

 9月11日午後1時から午後5時30分頃まで、名古屋大学大学院法学研究科宮木康博教授の同大学法学部の刑事法ゼミ(宮木ゼミ)の学生等に、模擬接見を開催しました。

2 模擬接見開催の趣旨

 近年、法曹志願者は減少しております。法科大学院の入学志願者は、平成16年に7万2800人であったものが、平成30年は8058人となっております。

 当委員会では、法曹志願者の減少に歯止めをかけ法曹志願者を確保するためには、高校生あるいは大学生などに対して法曹の魅力を伝えるべきではないかと考えておりました。そうしたところ、宮木康博教授から、宮木ゼミのゼミ生に対して勉強会を実施する機会をいただいたため、大学生に法曹の魅力を伝えるべく、模擬接見を開催した次第です。

3 模擬接見の内容

 模擬接見には、宮木ゼミのゼミ生(法学部の2年生~4年生)28人、宮木ゼミの卒業生(現法科大学院生)3人、指導する弁護士11人及び宮木教授が参加しました。

 被疑者役、弁護人役はともに学生に担当してもらいました。学生は、1班2人~3人の全12班に分かれてもらい、当委員会で作成したシナリオを約1か月前に配付しました。

 シナリオは全3種類あり、窃盗事案は被疑事実の一部否認・被害弁償等、覚せい剤事案は接見禁止の際の対応・所持品検査等、傷害事案は被疑事実の否認・早期の職場復帰等が問題となる事案でした。

 接見時間は30分とし、それぞれのシナリオ毎に、3人の被疑者役と3組の弁護人役が同時に模擬接見を行いました。模擬接見には当委員会の委員が1人付き添い、模擬接見終了後に、弁護人役、被疑者役の学生に、別室にて講評を行いました。

 学生は、被疑者からの、「(被害弁償のために)通帳からお金を下ろしてほしい」「(接禁中に)恋人に手紙を出したい」「会社にばれないように早く出たい」といった基本書には書かれていない要望に戸惑い、また、所持品検査といった典型論点の事実の聞き取りに苦慮しながらも、真摯に、熱心に接見を行っていました。

名大模擬接見.jpg

 その後、弁護士と学生との意見交換会兼懇親会を行いました。参加した学生のほとんどが意見交換会兼懇親会に出席していましたが、学生からは、「その場で考え、聞き取りをするのは非常に難しかった」「(弁護人が)ほとんど情報がない中で接見に行くということに驚いた」などと話をしており、中には、「法曹に興味を持った」という学生もいました。模擬接見は非常に有意義だったと考えます。

4 今後について

 学生から「来年はもっとうまくやります」という嬉しい言葉も出ており、来年以降も開催をしようと考えております。模擬接見をきっかけに法曹を志願する学生が増加することを切に願っております。