編・著者 | 愛知県弁護士会 研修センター運営委員会 |
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法律研究部 | コンプライアンスチーム |
出 版 社 | 新日本法規出版 |
サ イ ズ | B5版 頁 数 452頁 |
定 価 | 4,935円 |
発行年月 | 平成24年6月 |
当会には、弁護士が専門的な分野を研究し、当会の会員および国民に対し、その成果を還元することを目的として設立された法律研究部があります。
コンプライアンスチームはその一つであり、企業法務に精通し、とりわけ企業のコンプライアンス問題について造詣の深い弁護士が集まっています。
そのメンバーが、コンプライアンス違反が問題となった著名な事件を取り上げ、徹底した議論のもとに本書を作り上げました。
コンプライアンスは、経営上の違法行為を抑止し、ひいては経営を効率化することを目的としており、コーポレート・ガバナンス(企業統治)の要諦です。
昨今、会社法制の見直しが進んでいます。中間試案によれば、その柱の一つがコーポレート・ガバナンスの在り方であり、この問題を理解し、議論し、そして来るべき会社法改正に備えるには、過去のコンプライアンス違反事件を深く検討することは不可欠です。
本書は、その格好の手引となります。
【目次】
- 第1章 総 論
- 第2章 商品・製品の欠陥等
【事例1】日立アプライアンス冷蔵庫不当表示事件
大手家電メーカーが製造した冷蔵庫の断熱材にリサイクル樹脂材料を使用したことおよびこれにより削減されたCO2の量を実際より過大に表示した事件
【事例2】トヨタ自動車リコール事件
日本の自動車メーカーが日本・米国等において自動車の大規模なリコールを行った事件
【事例3】三菱自動車リコール隠し事件
大手自動車メーカーにおいて2度に渡りリコール隠しが行われ大きな非難を浴びた事件
【事例4】松下電器産業社製F F式石油温風暖房機中毒死事件
大手電機メーカーが製造販売したFF式石油温風暖房機から漏れた一酸化炭素により、死亡事故等が発生した事件
【事例5】パロマ湯沸器事故事件
不正改造された湯沸器の使用者が一酸化炭素中毒により死亡した事件
【事例6】赤福表示偽装事件
和菓子の消費期限等を長年に渡り偽装していた事件
【事例7】雪印乳業食中毒事件
大手食品メーカーの製品に含まれた毒素エンテロトキシンが原因で大規模食中毒が発生した事件
【事例8】ダスキン未認可添加物肉まん混入事件
国内で飲食店チェーンを営む企業が、海外で委託製造した肉まんの中に、当時日本では未認可の食品添加物が混入していたことを隠蔽し、批判等を浴びた事件 - 第3章 偽装取引・架空取引
【事例9】メルシャン水産飼料部循環取引事件
未回収売掛金の回収を装うために循環取引が行われた事件
【事例10】大阪トヨタ中古車架空販売事件
自動車販売会社が、従業員やその家族などを名義人に仕立て、中古車を販売したように偽装して販売台数を水増しした事件
〈コラム1〉オリンパス損失隠し事件について
精密機械メーカーが、資産運用による巨額な損失を「飛ばし」として不正な会計処理を行った事件 - 第4章 経 営
【事例11】ヤクルトデリバティブ巨額損失事件
大手飲料等メーカーが、資金運用業務担当取締役の指示のもとに行われたデリバティブ取引によって、約533億円もの巨額損失を被った事件
【事例12】大王製紙巨額貸付事件
大手製紙メーカー関連会社が、役員へ巨額の貸付を行い、それらがカジノ等で費消された事件
【事例13】ライブドア不実開示事件
東京証券取引所マザーズ市場に株式を上場していた会社の自己株式売却益還流スキーム等に係る不実開示が問題となった事件
〈コラム2〉内部統制システムの整備に関する取締役の責任について - 第5章 労働・セクハラ・パワハラ
【事例14】米国三菱自動車セクハラ事件
日系企業が、米国において、従業員のセクハラ行為を理由として巨額の損害賠償を命じられた事件
【事例15】日銀セクハラ事件
銀行に勤務していた女性職員が支店長からセクハラ行為を受けたことについて、支店長だけでなく、銀行についても使用者責任に基づく損害賠償が命じられた事件
【事例16】オリンパス配転命令無効事件
精密機器メーカーが、従業員が内部通報を行ったことを理由に不当な配転命令等の処分をした事件 - 第6章 施設・設備
【事例17】六本木自動回転ドア児童死亡事件
高層ビルを訪れていた6歳男児が出入口に設置されていた大型自動回転ドアに頭部、顔面を挟まれ死亡した事件
【事例18】エキスポランドジェットコースター死傷事件
遊園地において、長期間に渡って適切な検査がなされていなかったジェットコースターの車両部品が走行中に破損し多数の乗客が死傷した事件
【事例19】JR西日本福知山線列車脱線事件
列車が急カーブを制限速度超過のスピードで進入し脱線して大惨事になった事件 - 第7章 情報流出
【事例20】Yahoo! BB顧客情報流出事件
インターネット接続サービス業者から約450万人分の顧客情報等が流出した事件
【事例21】KDDI顧客情報流出事件
顧客情報管理システムの開発業務委託先会社社員から約400万人分の顧客情報等が流出した事件 - 第8章 インサイダー
【事例22】野村證券従業員インサイダー取引事件
大手証券会社の従業員が同社の手がけていた未公表のM&A等の情報を利用して多数の株式売買を行った事件
【事例23】村上ファンドインサイダー取引事件
他社の代表者らから上場株式の大量買い集めの方針を聞いた上で、同情報が公表される前に当該株式を大量に買い付けた事件 - 第9章 金 融
【事例24】UFJ銀行検査忌避事件
銀行が金融庁の検査に対して組織的に重要な資料を隠匿する等して検査忌避行為を行った事件
【事例25】丸八証券相場固定等事件
証券会社が初めて主幹事業務を担当した際に公募価格と同価格で買入れ注文を入れて株価を固定するなどした事件 - 第10章 独占禁止法
【事例26】マリンホースカルテル事件
ゴム製ホース(マリンホース)のメーカーによる国際的入札談合・受注配分・価格協定(カルテル)事件
【事例27】山陽マルナカ独占禁止法違反事件
スーパーを経営する会社が商品等の納入業者に対して行った不当値引、不当派遣要請行為等が「優越的地位の濫用」に当たるとして、公正取引委員会より排除措置命令と課徴金納付命令が下された事件 - 第11章 環 境
【事例28】石原産業不法投棄事件
石原産業工場内で発生した有機物残渣を不法投棄した事件
【事例29】コジマ廃家電事件
顧客から引き取った廃家電の一部が製造業者等に引き渡されずに所在不明となった事件 - 第12章 輸出管理
【事例30】ミツトヨ外為法違反事件
経済産業大臣の許可を受けず核兵器開発等に用いられるおそれのある測定機器を輸出した事件
【事例31】ヤマハ外為法違反事件
経済産業大臣の許可を受けず大量破壊兵器開発等に用いられるおそれのある無人ヘリコプターを輸出しようとした事件
〈コラム3〉内部通報制度について
【はしがきより】
本書は、企業の法務担当者や弁護士等の法律実務家のみならず、経営者から従業員までのすべての企業人を対象に、実際に起きた企業の不祥事の分析を通じて、コンプライアンスとは何かについて解説するものです。会社法に内部統制の制度が明文化され、コーポレート・ガバナンス、とりわけコンプライアンスの重要性が声高に指摘されていますが、企業の不祥事は跡を絶ちません。
こうした中、企業の不祥事をテーマとした書籍も数多く出版されています。しかしながら、本書のように個別の事例を具体的に紹介し、それを実務家の目から分析した上、今後の企業体制に向けてアドバイスを行うという形式の書籍は多くはありません。
また、執筆陣も上場企業の社外監査役、内部統制の外部窓口、第三者委員会の委員、顧問弁護士といった様々な形態で企業法務に現実に携わっている弁護士が中心となっており、その意味でも価値ある内容となっているものと自負しています。
本書の利用方法は様々ですが、事例集として、また、役員や従業員向けの研修資料や講演資料として、さらにはコンプライアンス態勢作りの参考図書としても利用していただけるものと存じます。
本書の試みが成功したか否かは、読者の皆様の判断を待つより他はありませんが、我々としては、少なくとも一つでも企業不祥事を予防する一助になれば、望外の喜びです。