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「全国一斉旧優生保護法相談会」が当地でも開催されました!

高齢者・障害者総合支援センター運営委員会 委員 進 藤 一 樹

1 はじめに

 2022年12月19日、「全国一斉旧優生保護法相談会」を開催しました。当会では、2018年3月に始めて以来、7回目となります。
 この電話相談会は、旧優生保護法により不妊手術や人工妊娠中絶といった優生手術の被害を受けた方やその家族、福祉関係者や医療関係者を対象に、優生手術被害についての一時金支給等について相談を受けるといった、日弁連及び各弁護士会が主催する全国一斉の電話相談会となります。

2 優生手術被害を取り巻く現状

 旧優生保護法による優生手術被害については、2018年1月30日の仙台地裁を皮切りに、2022年12月時点で、全国9地裁で31名が提訴しています。
 このうち、仙台、大阪、北海道及び神戸地裁では、優生手術や優生保護法を違憲としつつも除斥期間により原告の請求を棄却しましたが、2022年2月の大阪高裁及び3月の東京高裁、さらには1月の熊本地裁では除斥期間の適用を制限して請求を認容する画期的な判決が出ました。
 しかし、両高裁判決とも国は上告受理申立てをし、また、その後の大阪地裁では再び除斥期間を適用して請求を棄却するなど、未だ司法の判断に統一は見られず、被害者の救済は進んでいないというのが現状です。
 そのような中、2022年9月26日、当地においても同様に、優生手術被害についての国家賠償請求訴訟が提起されました。これは、東海3県において初の提訴となります。

3 当会での相談会に期待されたもの

 当地での提訴報道を受け、本相談会においても東海3県に在住する方たちから相談が寄せられることが期待されましたが、結果的には当会では1件の電話相談だけでした(全国では24件でした)。
 もっともその1件は、障害のある方が20代のころに医師から不妊手術を勧められたが、実際にされたかどうかは分からず、それがずっと心に引っかかっているといった内容のまさに当事者の方の置かれていた現状を示す貴重な相談でした。

4 本相談会の意義

 旧優生保護法による優生手術被害は、障害のことや不妊手術といった性に関する事柄であるから、弁護士に相談して打ち明けることは相当に勇気が必要です。これまで配偶者にも打ち明けることができないでいた方も少なくありません。また、優生手術が多く行われたのも今から50年近くも前のことですから、その大多数の方が高齢者となっており、声を上げづらい状況となっています。
 さらには、2022年12月にも報道された北海道江差町での障害者に対する不妊処置問題にもあるように、いまだに障害者差別は根強く残っていることからしても、弁護士会が、優生手術被害についての相談活動を実施していること、それを社会に周知することだけでも大いに意義があるものです。

5 おわりに

 優生手術被害については、一時金申請も当初の見込みより少なく、国が未だに責任すら認めないなど、被害者救済は途上の段階にあります。1月から3月にかけて全国で判決が相次ぎますが、被害者の年齢等も考えると、早期の全面解決が望まれます。今後も引き続き優生手術被害についての相談窓口があることを発信し続けたいと考えています。