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ボーイスカウトに魅せられて
~安藤芳朗会員~

弁護士とプロボノ活動(9)
ボーイスカウトに魅せられて
~安藤芳朗会員~

会報「SOPHIA」 令和4年10月号より

会報編集委員会

安藤会員タイトル.jpg

 安藤芳朗会員(59期)は、2012年から今年の5月まで10年間にわたり、一般社団法人ボーイスカウト愛知連盟の監事を務められていました。弁護士の立場で外部から監査業務を行っているのかと思いきや、安藤会員自身がバリバリのボーイスカウト活動を行ってきて、そして、今なお続けているとのこと。今回は、そんな安藤会員のボーイスカウトに掛ける熱い想いを伺って来ました。

 安藤会員が、今でも熱心に関わられているというボーイスカウト。まずは、実際にどのような活動をされているのか、ひと目見てこようと、お盆真っただ中の8月15日、愛知県岡崎市内で行われるキャンプに安藤会員が参加すると聞きつけ現場に取材に行ってきました。


■今日はよろしくお願いします。まずは、ここではどのような会が行われているのですか?

キャンプ会場の様子.jpg

 今日来ていただいたのは、4年に1度行っている「日本スカウトジャンボリー」というイベントで、岡崎市内の河川敷で、2泊3日のキャンプを行っています。本来であれば、日本全国のボーイスカウトが一堂に集まり、1万人規模のキャンプを開くのですが、今回は新型コロナの影響で、地区ごとに分かれて開催され、ここでは、岡崎市や西尾市を中心とする三河葵地区のメンバー約200人でキャンプをしています。


■例年だと1万人規模のキャンプ・・・そんな大人数でキャンプをするなんて、想像ができませんね。ところで、ボーイスカウトというと、小学生がキャンプや野外活動をしているというイメージですが、そもそもボーイスカウトってどんな活動をするのですか。

 「スカウト」というと、スポーツ選手や芸能人の人材を見つけて勧誘する人というイメージがありますが、その語源は、観察力や分析力といった高い能力が要求される、斥候部隊(1)にあります。ボーイスカウトの活動は、社会で活躍する人材を育成するために、イギリス人のロバート・ベーデン=パウエル(1857-1941)が書いた「Scouting for Boys」という本をもとにした活動にあり、1907年に始まりました。ボーイスカウトでは、野外でのグループ活動を通して、子どもたちの自発性を大切に、それぞれの自主性、協調性、社会性、たくましさやリーダーシップ等を育むために活動をしています。このように、ボーイスカウトの活動は、単にキャンプや野外活動での能力の向上を目指しているものではなく、社会で活躍できる青少年を育てる教育運動です。

 今では172の国と地域で、5700万人が参加する世界的な運動になっています。


■安藤会員自身も、子どもの時から活動されてきたのですよね?具体的にどんなことをしてきましたか。

小学校時代の安藤会員.jpg

 私が活動を始めたのは、小学校3年生のころ、親に勧められたのがきっかけです。私自身、そんなにアウトドアに興味があったわけでも好きだったわけでもなかったのですが、ボーイスカウトに入ったおかげで、アウトドアでの活動のスキルが身につきましたし、社会性やリーダーシップも少しは身に付いたと思います。

 活動としては、中学生になって自分たちで計画して、キャンプに出かけるのが楽しかったですね。高校生になると活動の幅も広がるのですが、特に思い出に残っているのは、「食文化の探求」という個人プロジェクトの計画を立てて、東京のもんじゃ焼き店で住み込みで働かせてもらったことです。


■高校生が東京のもんじゃ焼き店での住み込み修業ですか!?野外での活動ばかりかと思っていたのですが、ボーイスカウトでそのようなこともするのですね。

 ボーイスカウトは、基本的に野外を教場として活動しますが、プロジェクト等の企画力、それを実施するためのリーダーシップ、仲間との調和を図るコミュニケーション能力を養うために年齢に応じて自ら企画をして実行していく機会もたくさんあります。私のプロジェクトも「キャンプでもんじゃ焼きを作ろう!」との目的があってそのための調査をし、実際にキャンプで実行するというところまでやりました。もんじゃ焼きを作るには火加減が大事で、キャンプでは火加減を調整するのが難しく、もんじゃ焼きのたねが一瞬で蒸発してしまうなど、思ったように作れませんでした。結果としては、もんじゃ焼きはキャンプ飯には向かないということが分かったということを報告にまとめました(笑)。


■自ら企画と言うことは、住み込みで働いたもんじゃ焼き店も自分で見つけたのですか?

高校生の安藤会員と店主さん.jpg

 そうですね、中学校の修学旅行で訪れたもんじゃ焼きの店主さんととても仲良くなり、中学校の卒業式にも来てもらうなどした縁もあったことから、私が直接お店に電話をして交渉し受け入れてもらいました(笑)。この店主さんはとてもいい人で、1週間寝泊まりをさせていただくだけでなく、食事の世話までしていただきながら、東京のお母さんのような感じで迎え入れてくれました。


■高校生のころからすごい行動力だったんですね。

 ちなみに、このプロジェクトが評価されて私は「富士スカウト」(2)に進級し、東宮御所で当時の皇太子さまにお目にかかるという経験もさせていただきました。

 また、大学生になると中学生や小学生の指導役等を担うことになり、活動の内容も変わっていきます。私が大学生のころには、海外派遣としてブータン王国に行ったこともあり、そのリーダーを務めました。ブータンでは、現地でのボーイスカウト活動の体制整備を促進するためのマニュアル作成等の、ボランティア活動をしました。

 ボーイスカウトのおかげで、本当に様々な経験をすることができました。


■安藤会員は現在もボーイスカウト活動に関わられているようですが、どのような関与をされているのですか。

 ボーイスカウトでは、小学1年生から25歳の青年まで、5つの部門に分けて活動(3)しているのですが、私は、小学6年生~中学3年生の「ボーイ隊」の隊長をしています。私が所属している西尾第6団のボーイ隊には、16人の子どもたちがいて、元気に活動しています。ボーイ隊では、6人程度の班を編制して、月に1回程度、キャンプ、ハイキング、野外料理や奉仕活動といった活動をしています。ボーイ隊での活動内容は、班長を中心に、子どもたちが考えた「やりたいこと」をもとにしたプログラムに基づいて決めていきます。


■子どもたちの指導だけでなく、指導者に対する指導のような役割や一般社団法人ボーイスカウト愛知連盟の監事の役職も担っていると伺いましたが。

 ボーイスカウトでは、隊長等の指導者を支援する「コミッショナー」という役割があり、私は、三河葵地区の副コミッショナーをしています。私の担当は、18歳~25歳の青年の「ローバー隊」の指導者のみなさんの支援です。さらに、日本連盟の副リーダートレーナーという役職もいただいて、指導者向けの研修でスタッフとして、3泊4日間の指導者養成キャンプに奉仕したりしています。

 一般社団法人ボーイスカウト愛知連盟の監事は2012年から今年の5月まで10年間務めさせていただきました。監事となったのは、指導者で活動している中に弁護士をやっている人がいるということで、声がかかった感じです。


■本当に様々な形で、ボーイスカウトの活動に関わられているのですね。実際に、どれくらいの頻度でボーイスカウトの活動をされている感じなのですか。

 こうした全ての活動を含めると、週に2日程度は、何らかのボーイスカウト活動に関わっていて、毎月子どもたちの集会に出かけますし、月に1回は指導者向けの研修等に出かけていますかね。あっ、でもキャンプやアウトドアが好きというよりも、子どもたちが楽しそうに活動して成長していくのが楽しみで参加している感じです(笑)。実際に、家族やプライベートでは、キャンプにはあまり行きません。


■ボーイスカウトに様々な形で関与されているのですね。そのように、ボーイスカウトの活動を精力的に続けてきている理由は何ですか。

安藤会員と谷口さん.jpg

 今までに多くの先輩方にお世話になって、さまざまな経験をさせてもらいましたので、そのご恩を返したいと思っています。特に、近所で万年筆屋さんをされていた谷口政吉さんには、子どものころからお世話になりました。谷口さんは、日本連盟や県連盟で指導者養成を中心に活躍された先輩で、子どもとの接し方等様々なことを教えていただきました。もう亡くなられてしまいましたが、ボーイスカウトの先輩としてだけでなく人生の先輩としてもとても尊敬できる方で、一生の付き合いをさせていただきました。

 こうした方々との繋がりもあったので、自分も社会の将来を担う子どもたちにもいろんな経験をして成長していってほしいと思って活動を続けています。日々の活動の中で、とっても素直で楽しそうに活動している子どもたちを見ると、自分も嬉しい気持ちになります。長年続けていると、その子どもたちが成人して、社会で活躍してくれている姿に接することもあるのですが、こうした子どもたちの成長を見るのは、指導者冥利に尽きます。

 また、ボーイスカウトの活動は無償のボランティアですし、今回のように、お盆のど真ん中に2泊3日のキャンプに出かけることも快く?送り出してもらうなど、家族の理解もないと続けられないことなので、家族にも感謝をしています。

 ここまで続けてきたのは、決して頼まれて断る勇気がなかったからということはないと信じています(笑)。


■ボーイスカウトでの活動において、弁護士の経験やスキルは役立っていますか。

 子どもたちが活動を行う中で、最も大切なことは安全を確保することですし、指導者の方が責任を負わないようにする必要があります。野外活動中の事故を防止するには、下見をしっかりして、安全対策をしっかり実施することですが、これはまさに、過失の結果予見可能性、結果回避義務の問題ですので、自分自身の指導に活かすだけでなく、そのことを指導者向けの研修でお話ししたりして、弁護士としての知見が活きていると思います。実際に、新型コロナの影響下でも、可能な限り活動を続けているのですが、新型コロナ前は5、6人用のテントを張って共同で寝泊まりをしていたのですが、今は1人用のテントを用意して、集団感染等にならないようにするなどの配慮をしています。

 また、人が集まって活動する以上、いじめの問題やハラスメントの問題が起きることがあります。ボーイスカウトでも「セーフ・フロム・ハーム」という概念を用いて、精神的にも身体的にも傷つけることのないように努めていますが、そうした問題が起きないようにするために、弁護士としての知識や経験が活きていると思います。

 さらに、今年5月まで、一般社団法人ボーイスカウト愛知連盟の監事を務めましたが、一般社団法人の機関構成や権限分配、役員の義務や責任についての知識を活用させていただきました。私は、加盟員でもありますので、非加盟員の方が監事を務めるのとは違った視点で、ボーイスカウトの活動実態に即して法人の業務執行をチェックさせていただきました。一般社団法人ボーイスカウト愛知連盟の監事に弁護士が就いたのは私が初めてだったのですが、こうした弁護士としての知見を活かした監査業務を続けることが良いのではないかとのことで、今年の6月以降は外部の立場から平林拓也会員が監事を務めていらっしゃいます。


■最後に、安藤会員が伝えたいボーイスカウトの魅力について教えてください。

 子どもたちにとって、学校での勉強はとても大切ですが、学校とは別のところで、様々な職業や経験を有する地域の大人たちとかかわって、社会経験を積んでいくことも大切だと思います。なかなか野外でのキャンプ等を家庭で行うのは大変なところもあるかと思いますが、ボーイスカウトであればこうした経験も自然と積んでいくことができるところもいいところではないでしょうか。また、ボーイスカウトは、それぞれの年齢に合わせて、子どもたちが主体的に企画して、その企画を実行していく活動を重ねていきますので、社会に出てから役立つ能力も鍛えられます。子どもたちの成長にとってとても貴重な機会を提供してくれる場だと思います。

 指導者にとっても、仕事以外でさまざまな職業の人とかかわる機会は貴重だと思います。興味がある方がいらっしゃったら、ぜひ、一緒に活動しましょう。

安藤隊長とボーイ隊のみなさん.jpg

 安藤会員の会務での活躍の根源に、高校生や大学生のころから自ら企画立案して行動をし、今なお献身的に関わっているボーイスカウトでの経験があるのだと感じました。また、安藤隊長の下、活動していたボーイスカウトの隊員のたくましさを見て、子どもたちにとって多様な経験をすることの大切さを実感するとともに、安藤会員のボーイスカウト愛を強く感じることができました。



(1)地上戦闘に際し、敵の陣地に忍び寄り、敵情や地形などを観察して報告するために派遣される部隊。

(2)ボーイスカウト日本連盟の高校生年代において最高位のスカウトに与えられる章。

(3)小1から小2までの「ビーバースカウト」、小3から小5までの「カブスカウト」、小6から中3の8月までの「ボーイスカウト」、中3の9月から高校生までの「ベンチャースカウト」、18歳から25歳までの「ローバースカウト」と年齢毎に活動する部門が分かれている。