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第64回日弁連人権擁護大会(旭川)が開催されました

会報「SOPHIA」令和4年10月号より

会員 梶  田   晋

1 旭川市にて、9月29日にシンポジウムが、翌30日に第64回日弁連人権擁護大会が、昨年同様WEBでも配信されるハイブリッド方式で開催されました。

 大会は、旭川弁護士会の人権擁護大会実行委員会の小林史人委員長の開会の辞で幕を開け、同弁護士会の池田めぐみ会長、日弁連の小林元治会長、来賓の各ご挨拶がありました。続いて、今大会の運営委員会委員長である金喜朝弁護士(大阪)から大会の内容についての説明等がなされ、その後、議長に同弁護士が就任して議事が開始され、日弁連の増子孝徳担当副会長から2021年度下期から2022年度上期までの事業活動報告がなされました。

2 高レベル放射性廃棄物の地層処分方針を見直し、将来世代に対し責任を持てる持続可能な社会の実現を求める決議

 この決議は、原子力に依存せず、気候危機を回避して、持続可能な社会を実現するためには、エネルギー問題に対する日本全体としての取組が必要であるとともに、地方自治体が、自らの有する地域資源を最大限に活用し、持続可能な地域社会に向けた主体的取組をより一層推進させることが重要であるとして、国、地方自治体及び原子力発電事業者・核燃料の再処理業者等に対し、日弁連の提案する政策決定等を求めるものです。賛成多数で可決されました。

3 デジタル社会において人間の自律性と民主主義を守るため、自己情報コントロール権を確保したデジタル社会の制度設計を求める決議

 この決議は、日弁連は第53回人権擁護大会において、「『高度情報通信ネットワーク社会』におけるプライバシー権保障システムの実現を求める決議」を採択したところ、その後、デジタルプラットフォーマーの活動が著しく広がったこと、政府の主導により、官民を横断するデータの利活用が強く推進されていることを踏まえ、国に対しデジタル社会において人間の自律性と民主主義を守り、プライバシー権・自己情報コントロール権を確保するための法制度や原則の確立を求めるものです。満場一致で可決されました。

4 旧優生保護法下において実施された優生手術等に関する全面的な被害回復の措置を求める決議

 この決議は、被害者に対して全面的な被害回復を実現するためには、十分な補償等の措置の実施と併せて、旧優生保護法によって社会に根付いた優生思想に基づく差別をなくし、侵害された個人の尊厳を回復することが必要であるところ、被害者の高齢化が顕著となり無念な思いを抱えたまま亡くなった被害者も多いことに鑑みれば、一刻も早い全面的な被害回復の実現が急務であるとして、国に対し一時金支給法の抜本的見直しを求めるとともに、優生思想に基づく差別をなくすための諸施策の実施を求めるものです。満場一致で可決されました。

5 アイヌ民族の権利の保障を求める決議

 この決議は、アイヌ民族に関する政策を先住民族の権利に関する国際連合宣言に合致させ、同民族の伝統的生活・文化等の回復並びにアイヌコタン及び同民族の人々の権利の保障を実現するため、国及び北海道に対し、アイヌコタン固有の伝統を尊重し、漁撈・狩猟・採集等を行い、その対象の動植物が生息・生育する自然環境を維持管理する権利及び宗教的儀式や伝統儀式等を行う権利等の文化的・精神的権利を認めること等を求めるとともに、日弁連は今後も引き続き人権擁護を使命とする法律家団体として同民族の権利の保障に力を尽くすことを決意するものです。賛成反対の双方から熱い討論がなされ、賛成多数で可決されました。

6 再審法改正に関する取組について日弁連再審法改正実現本部の鴨志田祐美本部長代行から特別報告がありました。また特別企画として映画「すばらしき世界」が上映されました。

 次回、第65回人権擁護大会は令和5年10月5日、6日に長野市で開催予定です。