愛知県弁護士会トップページ> 愛知県弁護士会とは > ライブラリー > シンポジウム「子どもの意見表明権が社会を変える」

シンポジウム「子どもの意見表明権が社会を変える」

会報「SOPHIA」令和3年11月号より

子供の権利委員会 委員
小 宮 千 歩

1 はじめに

 11月14日(日)、当会ホールにて、シンポジウム「子どもの意見表明権が社会を変える」が行われました。

2 基調講演

 シンポジウム前半では、「校則をなくした中学校」で知られる元世田谷区立桜丘中学校長西郷孝彦さんにより、子どもに寄り添って考える意見表明権の実現についてご講演いただきました。

 西郷さんは在任時、全ての子どもたちが3年間を楽しく過ごせることを最上位目標と掲げ活動されました。西郷さんが同校において実際に行ったことを子どもたちが出演する動画や写真でご紹介いただきました。

 まず、西郷さんは、子どもが教室で過ごし、登校時間を守り、制服を着ることよりも学校に来られることの方が大事だと考えられた結果、登校はするが教室に入れない子どもが過ごせるよう廊下に机と椅子を置くことにし、遅刻すると学校に来なくなる子どものために登校時間をなくし、制服を着ると学校に来られない子どものために制服を廃止しました。

 次に、子どもの最善の利益を考えるためには、子どもの話を聞くこと、様子を観察することが大切だと考えられた結果、子どもが話をしたい先生を自由に選んで話をする時間(ゆうゆうタイム)を設けました。

 最後に紹介された卒業直前の中学3年生のインタビュー発言は大変印象的なものでしたので、以下記載いたします。

  • 「自由とは、信頼関係である」
  • 「自由だからこそ自分で考えて行動できる」
  • 「自由だから個性が出せる」
  • 「自由だから、自分が周りと違ってよいと思え、今のままの自分でいいと思える」

3 パネルディスカッション

 シンポジウム後半では、西郷さん、特定非営利活動法人こどもNPO副理事長山田恭平さん、当委員会間宮静香副委員長により、子どもの意見表明権について、パネルディスカッションが行われました。

 まず、子どもが安心して意見を言える環境を作るためにはどのようにしたらよいかとの質問に対して、聞く側の大人に子どもの話を聞くための十分な余裕が必要であり、子どもが話したこと以外のことを想像することが大切であり、大人は肯定的な応答を重ねていくことで子どもが話をしてくれるようになるとのご意見をいただきました。

 次に、子どもの意見を聞く機会を作るためにどのように工夫をされているかとの質問に対して、西郷さんは桜丘中学在任時に、前述の「ゆうゆうタイム」への参加を初回必須としたこと、山田さんは、子どもと一緒に遊ぶことを通じて相談しやすい環境を作ることができること、大人が相談に乗り対応している姿を周囲の子が見ることによって、周囲の子どもも話してくれるようになることが経験上多いとのご意見をいただきました。また、相談を受けた大人がその後生じるであろうことの見通しを子どもに伝えることによって、安心して相談できる環境作りにつながるとの意見もいただきました。

4 他にも、桜丘中学において校則を廃止したこと、生徒会の議決は必ず実現すると約束したこと等、紙面の関係上紹介できませんが、大変興味深いお話を伺うことができました。