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中高生向け模擬裁判 ボクは犯人じゃない! -コンビニ強盗致傷事件-

会報「SOPHIA」令和3年8月号より

法教育委員会 中高生模擬裁判チーム
小笠原   佑

1 はじめに

 サマースクールの大トリとして、中高生向け模擬裁判が開催されました。コロナ禍で開催すら危ぶまれましたが、Zoomで無事開催でき、36名の中高生と16名のチーム員が参加して盛況のうちに終えることができました。

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2 今年度の特徴(中弁連DVDの活用)

 今年度はオンライン模擬裁判であったため、事件や裁判の様子を収録したDVDを流し、その内容について議論するという方法で実施しました。

3 事案の概要と争点

 ある日の真夜中、スキー帽・サングラス・マスクで顔を隠した男がコンビニに押し入り、店員を刃物で脅して、店のレジから現金107,000円を奪い取って逃げました。店員は、逃げる男を捕まえようと店の外へ追いかけてもみ合いとなりますが、転倒した拍子に骨折の怪我を負います。その際、男のサングラスが外れ、一瞬、店員と男は目と目が合います。
 男はそのまま現場を去りますが、直後に、バイクの走り去る音が聞こえてきました。
 1週間後、近くに住む被告人が逮捕され、被告人宅からは、スキー帽、現金97,000円、アウトドアナイフが押収されました。
 本件の争点は被告人の犯人性であり、被害者の供述の信用性や、被告人の弁解の合理性が議論されました。

4 生徒たちの多様な意見

 生徒たちからは、例えば被害者の視認状況につき、「薄暗いコンビニの外で、一瞬、赤の他人の犯人と目と目が合っただけだし、『被告人と犯人の目元が似ている』と言い切れるほど、認識はできなかったんじゃないかな」という意見もあれば、「コロナ禍のマスク生活をして、目元だけでもそれなりに人を区別できることがわかった。たとえ薄暗い中でも、数秒目元を見ることができれば、人を区別することは十分できるんじゃないか」との意見も。また、自宅の現金はキャンプ用具を買うために貯めていたものという被告人の弁解についても、「貯金に回すお金がほとんど無く、貯金も10万円しかないのに、それと別に10万円近く自宅に置いてあるのはおかしくないか」という意見と、「大人が、10万円程度の現金を自宅にもっておくことはそれ自体おかしいとは思えないよ」という意見があり、一つ一つの事実につき、肯定否定の両面から事実を評価した意見が次々と飛び出しました。

5 おわりに

 評議の結果、有罪とした参加者と無罪とした参加者の人数はほぼ同数で、企画後のアンケートでは、ほぼ全ての参加者から「よかった」、「また来年も参加したい」との回答を得られました。多面的に事実をとらえて評価したり、違う意見の人と議論したりすることの面白さを実感してもらえたのであれば、うれしい限りです。
 来年もたくさんの中高生に参加してもらえるよう、チーム員一同、頑張っていきたいと思います。