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分ける社会を問う!地域でともに学び・育つインクルーシブ教育、ともに生きる社会へ ~今、障害者権利条約が日本に求めるもの~

第67回人権擁護大会・シンポジウム第1分科会
分ける社会を問う!地域でともに学び・育つインクルーシブ教育、ともに生きる社会へ ~今、障害者権利条約が日本に求めるもの~

会報「SOPHIA」 令和7年12月号より

会員 齋 藤 清 貴

 第67回人権擁護大会・シンポジウムの第1分科会が難聴の障害を持つ久保陽奈弁護士(東京)と全盲の障害を持つ大胡田誠弁護士(第一東京)の司会により、手話通訳、文字通訳も用いて行われました。

1 基調講演

 基調講演として、石川准さん(静岡県立大学名誉教授 国連・障害者権利委員会元副委員長)の「障害者権利条約の国内実施と当事者参画 到達点と課題」、大谷美紀子弁護士(東京 国連・子どもの権利委員会元委員長)の「障害のある子どものインクルーシブ教育についての権利」が行われました。

2 アンケート調査・ヒアリング結果報告

 日弁連による障害当事者及びその保護者に対するインクルーシブ教育に関するアンケート調査・ヒアリング結果として、障害者が「在籍する場」で支援する意識の不足により、合理的配慮の拒否や、支援が得られないことによる「被害」が発生し、これにより「通常学級は障害のある子の『ためにならない』」という社会的認識が広がり、この認識が「障害特性に合った環境」として、分離された場としての支援学級・学校への希望増加となり、この結果、また1番目の「在籍する場」で支援する意識の不足、に繋がるという悪循環が生じていることが報告されました。

3 インクルーシブな教育の報告

 脳室周囲白質軟化症による四肢不全を抱えながら通常学級で学んできた現役高校生、脳性麻痺の子を通常学級に通わせた親、長崎県の学校でインクルーシブ教育を推進する教員、プレクチン欠損型表皮水疱症(推定1000万人に1人の難病)を抱えながら通常学級で大学卒業まで学び現在は重度訪問介護サービスを利用して自立生活を行っている当事者が、障害のある子どもが通常学級で学ぶことについて、実体験をもとに報告しました。

 障害があってもみんなと同じがよいこと、仲間が支えてくれたこと、仲間とずっと友達でいること、仲間を励ます存在になっていることに気付いたこと、障害者と一緒にいれば、それは当たり前になり、障害のない子にとっても人間力、非認知能力、多様性を認めることになること、一緒にいないと互いに関わり方を学ぶことができず、差別の心を生むことにもなること等が報告されました。

4 地域生活の実践報告

 障害のある人の脱施設化の観点から、精神科に特化した訪問看護ステーションを営む社会福祉法人南高愛隣会の看護師と利用者である精神障害者により、同法人が実践するACT(Assertive Community Treatment)プログラム(包括型地域支援プログラム)利用による地域生活の実践が報告されました。

5 インクルーシブな社会へ向けて(提言)

 本シンポジウムにより、多様な個性と能力、興味や関心を持つ子どもたちが共に学ぶ権利を保障し、差異と多様性が尊重される地域で生きる権利を保障することによって、人間性豊かな学校と社会を実現することの重要性と可能性が示されたことが確認され、

①インクルーシブ教育の理念と定義の明確化

②子どもの権利を主軸にした学校教育の実現

③分離教育からインクルーシブ教育への転換

④国家行動計画(ロードマップ)の提言

⑤すべての障害のある人がインクルーシブな地域社会で暮らす権利の保障

⑥精神障害のある人が自分らしく地域で生活する権利の保障のための制度改革

⑦国内人権保障の水準を国際人権の発展と連動させるための日弁連の役割と国内人権機関の創設

を目指すことが提言されました。