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シンポジウム「さぁ、どうする!公文書管理」
会報「SOPHIA」平成31年2月号より
情報問題対策委員会 委員 不 破 佳 介
公文書管理への信頼が大きく揺らぐ昨今、1月27日(日)ウインクあいちにおいて、「さぁ、どうする!公文書管理」と題するシンポジウムが開催された。第一部では、講師に公文書管理に精通する三宅弘弁護士(第二東京)を迎え、第二部では、毎日新聞の日下部聡氏のレクチャーののち、三宅弁護士、日下部氏、当会の新海聡会員によるパネルディスカッションが行われた。なお、公文書管理法制定に尽力された福田康夫元内閣総理大臣のビデオレターも上映された。
第1 三宅弘弁護士による講演
公文書管理については、保存期間の問題、組織共用文書の解釈の問題、電子データの取扱という問題がある。講演では、これらの問題について具体的事例に基づいて解説がなされた。
1 森友問題
8億円の値引きの経緯に関する文書について、財務省行政文書管理規則上の保存期間「1年未満」の文書だと解釈して廃棄した点は、公文書管理法4条及び行政文書ガイドラインに反する重大な問題である。
2 加計学園問題
いわゆる「総理のご意向」に関するメモは、行政文書として管理されるべきであった。なお、この問題に限らず、組織共用文書にあたるものが、行政職員の個人のメモであるとして情報公開から除外されるケースが散見され、情報公開の趣旨を没却する事態が生じている。
3 自衛隊日報問題
南スーダンPKO派遣日報文書は、当初不存在と回答したものが、電子データとして残っていたのであり、電子データに関する公文書管理の甘さが露呈した事件である。この事件を踏まえた文書の集中管理の流れの中で、その後のイラクPKO日報問題も明らかとなった。
第2 福田元総理のビデオレター
公文書を残し歴史的に検証することの重要性を真摯に説明されたビデオレターであった。
第3 パネルディスカッション
冒頭、日下部氏から、情報公開及び公文書管理についての調査報道を紹介しながら、日本の公文書管理の危機的状況について警鐘が鳴らされた。
三者のパネルディスカッションは、多岐の事項に亘る率直な意見交換となった。主なやり取りを紹介する。
① 官僚が作成する仕事に関する私的な手書きのメモは、自分の机の引き出しに入れて、自分以外に見られないようにしておくことで、組織共用性を潜脱しているおそれがあること
② 通常多人数が集まって会議をすれば議事録を作成するのが当然だが、情報公開をおそれてか、会議の議事録を作らないという信じられない例も出ていること
③ 行政文書ファイル管理簿について、「〇〇参考資料」という抽象的な題名でファイリングし、中を見たら何百という資料が一括で綴じてあることがしばしばあり、ファイル名と資料が対応していないこと
第4 まとめ
いわゆるモリカケ問題が下火となり、公文書管理というテーマへの関心が薄れつつあるようにも思うが、公文書はそもそも国民の財産であり、その管理は政策過程の検証に必要不可欠であることを実感した。