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シンポジウム「消費者教育のあり方-成年年齢引き下げに備えて-」

会報「SOPHIA」平成31年2月号より

消費者委員会 委員 佐 藤 暢 高

1 はじめに
 2022年4月1日から民法の成年年齢が18歳に引き下げられることを受け、2月9日に弁護士会館5階ホールにおいて、消費者教育のあり方に関する標記シンポジウムが開催されました。
2 基調講演
 鳴門教育大学大学院学校教育研究科准教授の坂本有芳氏から、「成年年齢引き下げに伴う課題と消費者教育のあり方について」というテーマで講演をしていただきました。
 20歳の若者の消費者被害件数は、18歳、19歳の若者の約2倍であり、21歳、22歳の若者と比べても多く、成年となった直後に被害に遭っていることや、今後順次、学習指導要領が改訂・実施され、学校における消費者教育の拡充が図られる予定であることなどのご報告がありました。
 また、坂本氏が高校・大学で行ったアンケート結果から、契約の効力や成立時期などの基礎知識が不十分であることが明らかになりました。さらに坂本氏からは、自ら金銭管理をし、適切に商品選択をすることができていないことから消費者被害に遭いやすいとの指摘がありました。
 坂本氏によれば、消費者教育においては、知識の習得にとどまらず、具体的な事例に即して考えさせることが必要であるとのことでした。
3 報告
 名古屋市消費生活センター所長の大谷達哉氏より、若者に多い消費者被害について報告をしていただきました。
 名古屋市消費生活センターにおける若者(30歳未満)の相談件数は減少傾向にあり、スマートフォン等の普及で解決法などの情報取得が容易になっていることが影響しているのではないかとのご報告がありました。
 他方、スマートフォン等の普及の弊害として、出会い系サイトやオンラインゲームの課金といったデジタルコンテンツに関する相談が増加しており、また、交友関係から被害が拡大し易いマルチまがい等に関する相談は他の年齢層と比べて割合が高くなっているとのご報告がありました。
4 パネルディスカッション
 田中美有委員をコーディネーターとし、基調講演をいただいた坂本氏、経済産業省中部経済産業局産業部消費経済課総括係長の磯貝智子氏、全国消費生活相談員協会中部支部支部長の清水かほる氏、愛知県立知立高等学校社会科教諭の田中見佳氏、黒柳良子委員をお招きして、パネルディスカッションを行いました。
 パネリストの方々からは、それぞれ消費者教育の取組をご紹介いただきました。また、意見交換において、他の機関と連携することは、消費者教育を実効的なものにするのに有用であるとの意見がありました。

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5 最後に
 本シンポジウムは、成年年齢の引き下げに伴う被害拡大防止のためには消費者教育が極めて重要であることを改めて認識するとともに、各機関が行っている消費者教育の実情を共有する良い機会となりました。