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シンポジウム「カジノ作って本当に大丈夫?~IR関連法(カジノ法)とギャンブル依存症対策を考える~」開催される

会報「SOPHIA」 平成30年5月号より

消費者委員会 委員 安 田 庄一郎

1 はじめに
 5月12日(土)午後1時30分から、当会会館において、IR関連法案の問題点とギャンブル依存症対策を考える標記シンポジウムが開催されました。


2 最初に、カジノ解禁実施法案の問題点とこれに対する日弁連の取組について、仙台弁護士会の新里宏二弁護士から、報告がありました。
 新里弁護士は、自身の海外のカジノ視察の経験から、海外観光客の利用だけではカジノ経営が成り立たず、日本国民をメインターゲットとすることにつながるのではないかという懸念を示されました。
 また、刑法の賭博罪との関係でも、売上の一部を国庫に納付させるだけで、カジノの違法性が阻却されるのかとの疑問が呈されました。


3 次に、静岡大学人文社会科学部の鳥畑与一教授から、カジノ合法化の問題点について講演がありました。
 アメリカのカジノ経営の分析から、IR(複合観光施設)が、IR全体で集客した利用者を依存症にして、カジノのリピーターとすることで収益を上げるビジネスモデルであり、このようなビジネスモデルとギャンブル依存症対策との両立が困難であるという鳥畑教授の指摘は、カジノの問題を端的に示す極めて重要なものであると感じました。
 また、7日間で3回、28日間で10回という入場回数制限では、短時間に大金を賭けることのできるカジノの依存症対策としてほとんど実効性がないという指摘もなされました。
 地域経済の発展との関係でも、IRによる利用者の囲い込みがなされ、周辺事業者にとっては、かえってマイナスになるという指摘もありました。


4 10分間の休憩を挟んで、過去にカジノを利用しギャンブル依存症となった当事者の方の体験談が、当会の平井宏和会員との対談形式で語られました。
 海外のカジノの利用でギャンブル依存症に陥ったという当事者の体験をうかがうと、入場回数制限や入場料の徴収などでは、依存症対策としてはほとんど効果がないことがよく分かりました。


5 次に、ギャンブル依存症対策の現状と課題について、宮崎県弁護士会の成見暁子弁護士より報告がありました。
 この報告では、ギャンブル依存症は病気であり、本人の自覚だけで解決できる問題ではなく、このようなギャンブル依存症に陥る危険のあるサービスを、十分な対策なく提供することは消費者被害ともいえるという指摘がありとても重要だと感じました。
 同時に、公営ギャンブルの広告規制等の依存症対策が不十分な状況でカジノを作ることがいかに危険なことを再認識しました。

6 最後に、愛知県におけるIR施設誘致の現状について当会の加藤博子会員から報告がありました。IR施設の中核となるカジノの問題点についての議論がまだまだ不十分であり、今後も動向に注意していく必要があると思いました。