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国際家族法学会inバンコクに参加しました

会報「SOPHIA」令和5年6月号より

国際委員会 委員 田 邊 正 紀

 5月31日から6月2日の日程でタイ・バンコクにおいて開催された国際家族法学会(IAFL:International Academy of Family Lawyers)のアジア太平洋支部、年次大会に参加しました。

 国際家族法学会は、1986年に設立された国際的な家族法を扱う弁護士の団体で、現在68の国と地域に約1000人の会員を有しています。入会するためには厳格な審査があり、日本人の会員は未だ9名です。今回の大会には、オーストラリア、香港、アメリカ等を中心に約150人の弁護士が参加していました。

 初日は、ウェルカムレセプションに参加しました。他の法曹団体のパーティーに参加すると、「ビジネスロイヤーではない」と自己紹介すると何となく興味なさそうな反応をされることも多いですが、ここでは「どこの国の案件を扱ったことがあるか?」などという質問を受けるので、話題に事欠くことはありませんでした。また、女性弁護士の人数が多いというのも家族法を扱う法曹団体の特徴かと思います。レセプションの後は、香港の弁護士2人、シンガポールの弁護士2人と、今回日本から参加した弁護士3人で二次会(?)に赴き、親睦を深めました。

 2日目のプログラムは、「離婚時に隠し財産をどうやって発見するか」という実務的な話題から始まりました。多くの国ではディスカバリーの制度があったり、財産目録の開示義務があり、違反すると法廷侮辱罪などのペナルティがあるなど強制力のある制度が用意されていることが多いようです。しかしながら、管轄外に隠し持っている財産の発見にはどこの国も苦労しているようです。この日の夜のプログラムでは、大会初参加の弁護士を招待するディナークルーズが行われました。私も、昨年加入が認められたばかりですので、「初参加」枠でクルーズに参加しました。約40人の参加者の中に15人程度の初参加者がおり、クルーズの最後には自己紹介の時間が設けられるなど、初参加の人を積極的に会員として巻き込んでいくための仕組みが用意されていました。

 3日目のプログラムでは、ある架空の事例について7人ごとの20のグループに分かれて模擬陪審を行うというものがありました。子どもがいる国籍の異なる内縁カップルが第三国で離婚(?)する場合の子どもの監護権や財産の清算について議論するものです。私のグループは、香港とアメリカの弁護士が多数を占めていましたので、内縁の認定と子どもの共同監護は簡単に押し切られました。また、財産分与と5年間の離婚後扶養についても僅差でしたが認めることになりました。全体の結果としては、意外なことに内縁を認めない陪審グループがいくつも存在し、財産分与や離婚後扶養を認めない陪審グループも約半分ありました。国際的な紛争解決においては、判断主体によって全く異なる結論が出ることを再認識するとともに、グループ内で自分の主張を押し通せなかったことを猛省しました。また、この日は代理母出産のテーマの講演も行われました。タイの代理母出産の法制度設立のきっかけの一つが、1人の独身日本人男性が13人の子どもを代理出産させたことにあることを聞いて複雑な思いでした。

 約3年ぶりの現地での国際会議参加でしたが、やはり現地で会議に参加して親睦を深めることで、視野が広がることを思い出させてくれました。皆さんも、自分の専門分野に特化した国際団体を探してみてはいかがでしょうか。