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光州地方弁護士会共同セミナーの開催のご報告

会報「SOPHIA」 令和4年11月号より

国際委員会 委員 庄司俊哉

3年ぶりのリアル開催

 韓国光州地方弁護士会(以下「光州会」)との交流は平成20年度に開始され、毎年交互に訪問を重ねてきましたが、令和元年の光州会来訪後はコロナ禍のため、リアル交流が中断していました。令和2年にはウェブ交流会がありましたが、ようやく11月4日、光州会の来訪によりリアル交流が再開されました。光州会から総勢18名が参加され、当会からは会館5階で開催された共同セミナーに20名、ホテルでの懇親会に19名が参加しました。

会館5階での共同セミナー

 当会からは竹内裕詞会員による「日本の借地借家、空き家、所有者不明土地に関する法制度」の発表がありました。光州会からの質問には「韓国では都市部と地方では、不動産に関する税率が異なる」「韓国では住居用の不動産ではなく、セカンドハウスは税率が高く設定されている」など、韓国の現在の不動産市場(不動産価格が急激に上昇)を背景とした税制がとられていることを前提としたものが多く、日本との違いを知ることができました。

 光州会からはキム・ドクウン弁護士による「韓国の賃貸借保護法」の発表がありました。韓国にも住宅賃借人を保護するために、民法の特別法として「住宅賃貸借保護法」という日本と類似した法制度があります。しかし韓国には、日本とは異なる独特の賃貸借に関する慣習があるとのことです。具体的には、「チョンセ」と「ウォルセ」です。チョンセ(伝貰)とは、賃貸借契約時にあらかじめ大家との間で賃貸期間を決め、まとまった保証金(住宅価格の5~8割程度)を支払うことで月々の家賃を支払わないシステムのことです。またウォルセ(月貰)は、入居時保証金(チョンセより低く設定)を支払うものの、同時に月々の家賃支払も発生するシステムです。両者とも、保証金は退去時に全額返金されます。こういった慣習が存在しているのは、大家が預かった保証金を銀行に預けると年利5~10%の利子がついてきたことから、慣習として成り立ってきたのだと考えられます。

 また韓国では、賃貸借契約は「更新されない」という原則のもと、住宅賃貸借保護法により、賃借人は1回に限り更新要求権が認められており、しかも大家が契約更新時に賃料や保証金の増額要求をすることが多かったため、同法により5%以上増額できないように制限されているとのことでした。

 韓国も、日本の民法を参考に法制度を導入したのですが、経済情勢や社会の慣習の存在とともに、欧米等先進諸国の制度の研究などにより、日本の賃貸借法制とは異なる独自の制度を発展させてきたことが分かりました。

 光州会からは「来年には、多くの愛弁参加者が光州を訪問されることを期待します」との熱いメッセージをいただきました。来年が今から楽しみです。

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