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中部経済新聞2026年7月掲載
憲法改正と国民投票 十分な議論が大切
中部経済新聞2026年7月掲載
憲法改正と国民投票 十分な議論が大切
![]() | 最近、高市政権が憲法改正を進めようとしているというニュースをよく見るね。憲法改正という言葉は聞くけれど、実際にはどういう手続で進むものなのかな。 |
|---|---|
![]() | 憲法は国の基本的なルールですから、普通の法律とは違い、改正にはとても厳しい手続が定められています。憲法96条では、まず衆議院と参議院のそれぞれで総議員の3分の2以上の賛成によって改正案を発議し、その後、国民投票で有効投票の過半数の賛成を得て初めて憲法が改正されます。つまり、国会だけで決めることはできず、最終的には国民一人ひとりの判断に委ねられる仕組みになっているのです。高市首相は、来年の春までに、憲法改正の発議のめどを立てたい、と言っています。 |
![]() | なるほど。高市政権は、どんな改正を目指しているのかな。 |
![]() | 政府・与党は、自民党がこれまで示してきた四つの改憲項目を中心に議論を進めようとしています。具体的には、自衛隊を憲法に明記すること、緊急事態への対応を強化すること、教育の充実、そして合区の解消など参議院の選挙制度に関する内容です。背景には、安全保障環境の変化や大規模災害への対応など、時代に合わせて憲法を見直す必要があるという考えがあります。 |
![]() | なるほど。来年の国会で実際に実現できるのかな。 |
![]() | そこが大きなポイントです。衆議院では改憲勢力が3分の2以上を確保していますが、参議院では与党だけでは発議に必要な議席数に届きません。そのため、憲法改正案を発議するためには、野党の一定数の賛成を得ることが不可欠になります。憲法改正は多数決だけで進めるものではなく、できるだけ幅広い政治的合意を形成することが求められている制度なのです。 |
![]() | もし国会で発議されたら、その後は国民投票になるんだね。 |
![]() | はい。国民投票では、私たち有権者が改正案ごとに賛成かどうかを投票します。国会で発議されると、60日から180日以内に国民投票が実施され、有効投票の過半数が賛成すれば憲法改正が成立します。通常の選挙は候補者や政党を選びますが、国民投票では憲法改正案そのものについて国民が最終判断を下すという点が大きく異なります。 |
![]() | その手続を定めているのが国民投票法なんだね。 |
![]() | そのとおりです。最近、この国民投票法の改正が行われました。今回の改正では、離島などで悪天候により投票箱の輸送が困難になった場合の開票方法の整備や、投票立会人の要件の見直し、憲法改正案の広報放送についてAM放送だけでなくFM放送も利用できるようにするなど、主に投票手続を円滑にする内容が盛り込まれています。 |
![]() | それなら、あまり問題はないようにも思えるけれど。 |
![]() | 実は、この法改正とは別に、以前から多くの専門家が課題として指摘している点があります。それがインターネットやSNSを利用した情報発信のあり方です。 現在の国民投票法では、テレビや新聞については一定のルールがありますが、インターネット広告やSNSでの情報発信については十分な規制がありません。そのため、資金力のある団体や組織が大量の広告を配信すれば、世論に大きな影響を与える可能性があるのではないかという懸念が以前から指摘されています。 一方で、インターネット上の情報発信を規制し過ぎると、今度は表現の自由との関係が問題になります。そのため、どのような制度が望ましいのかについては様々な意見があり、いまだ十分な結論には至っていません。今回の改正でも、この点は法改正の対象とはならず、今後の検討課題とされています。 |
![]() | 憲法改正の前提として、国民が正しい情報を得られる環境づくりが重要なんだね。 |
![]() | そのとおりです。憲法は国の基本法であり、一度改正されれば長期間にわたって私たちの社会の土台になります。だからこそ、改正に賛成か反対かという立場以前に、国民一人ひとりが十分な情報に接し、冷静に判断できる環境を作ることが何より大切です。 憲法改正自体は、憲法が予定している手続です。しかし、その前提として、国民が憲法改正の内容を十分理解し、多様な意見に触れ、公平な情報のもとで判断できる環境が整っていることが欠かせません。 |
![]() | 憲法は私たち全員のルールだからこそ、急いで結論を出すのではなく、時間をかけて議論することが大切ということだね。 |
![]() | そうです。憲法改正は、一つの政権だけの課題ではなく、将来の世代にも影響を与える国の大きな選択です。賛成、反対の立場を超え、十分な国民的議論が行われ、正確で公平な情報が国民に提供されることが、成熟した民主主義にとって最も重要ではないでしょうか。 社長 なるほど。でも、そもそも、日ごろ憲法自体について知る機会もないし、今の憲法がどのようなものかも、よくわかっていないな。 弁護士 日ごろ憲法の条文に触れる機会はなかなかないですから、仕方ないですね。 憲法は、国家権力を憲法によって縛り、国民の自由と権利を守るために存在しています。その根底にある価値が、日本国憲法が最も大切にしている「個人の尊厳」です。 表現の自由、思想・良心の自由、学問の自由、幸福追求権など、一つひとつの人権は、すべて一人ひとりのかけがえのない人格を尊重するという考え方から生まれています。ですから、「憲法改正」の是非を考える際にも、提示されている「憲法改正」が、権力を縛る方向の改正か、緩める方向の改正か、私たちの人権や自由が制限される方向の改正かどうか、という視点は大事だと思います。 |
![]() | 我々の自由の幅にもかかわってくるということだな。 |
![]() | おっしゃる通りです。単に「古いものを新しく」という感情ではなく、提示されている憲法改正自体をしっかり吟味することが大事だと思います。 憲法改正に賛成であれ反対であれ、公平で正確な情報が保障された環境の下で、一人ひとりが主体的に考え、判断していくことが何より重要ではないでしょうか。 |
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