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共有に関するルールが変わります 所在不明等共有者がいる土地の利用が円滑に

中部経済新聞2023年4月掲載
共有に関するルールが変わります 所在不明等共有者がいる土地の利用が円滑に

今度、工場の周りを整備しようと思って、土地を調べていたんだ。先生も知っているとおり、当社の工場の敷地は、ほとんど私の父の土地なんだよ。
そうでしたね。先代の社長が土地を準備して工場を建てたのでしたね。それがどうかしましたか。
実は、工場の脇の砂利道が、父持分三分の二、他の人持分三分の一の、共有になっていることが判明したんだ。父に聞いてみたら、隣地の人から急に買うことになった関係で、手持ちのお金が足りずに、当時一緒に会社を経営していた元取締役とお金を出し合って買って、共有にしたそうなんだ。でも、その後その元取締役はすぐに経営から離れたものだから、もう長く連絡をとっていないらしいんだよ。共有とはいえ、一部他人の名義が入っている土地となると、勝手に手を加えられないのじゃないかと思ってね。
なるほど。共有の場合、各共有者は、持分に応じて共有物を使用することができるのですが、共有者相互の関係を調整するため、①共有物に変更(造成等)を加えるには、共有者全員の同意を要する②管理(使用方法の決定等)に関する事項は、各共有者の持分の過半数で決する③保存行為(補修等)は、各共有者が単独ですることができる、と民法で定められています。おっしゃるとおり、共有の土地であれば、共有者が単独でできる行為には限りがありますね。ところで、令和5年4月から、共有に関するルールが変わるのをご存じですか。
そうなのかい。
見直しのきっかけとしては、所有者不明土地問題があります。登記がされないまま相続が繰り返され、共有者が多数に上ったり、所在が分からない共有者がいたりして、土地の利用に支障を来すことが、従来から問題になっていました。今回の民法改正により、共有物の管理等がより円滑になると思われます。
共有地の管理方法の決め方については、具体的にはどのような点が変わったんだい。
今回の改正では、共有物に変更を加える行為であっても、形状又は効用の著しい変更を伴わない軽微変更については、②の管理行為として、持分の過半数で決定することができる、と定められました。例えば、砂利道をアスファルト舗装することは、軽微変更にあたると考えられていますから、元取締役が反対しても、持分の三分の二をもっている先代社長が賛成すればできるわけですね。また、一定の期間を超えない短期の賃借権等の設定は、持分の過半数で決定することができることも明記されました。ですから、同じく元取締役が反対しても、先代社長が賛成すれば、一定期間会社に貸すこともできますね。
なるほどね。共有者の持分の過半数で決定して行えることの範囲が広くなって、明確になったわけだね。確かに、共有者全員の同意がいる場合に比べれば、管理がしやすくなりそうだね。ただ、父はその元取締役に随分長く連絡を取っていないみたいだから、管理方法の協議をお願いしても、返事が来ないかも知れないよ。
管理方法の協議にあたって、賛否を明らかにしない共有者がいる場合には、裁判所の決定を得て、その共有者以外の共有者の持分の過半数により、管理に関す
る事項を決定することができることが定められました。まずは先代社長から、その元取締役に対し、相当の期間を定めて、例えば、砂利道をアスファルト舗装したい等と、決定しようとする管理事項を示した上で、賛否を明らかにすべき旨を催告します。その上で、返事がなければ、他の共有者の過半数の同意、すなわち先代社長の同意で管理をすることができる旨の決定を、裁判所に申し立てることが考えられますね。
元取締役から返事が来なくても、適法に管理方法が決められるわけだ。じゃあ、元取締役に手紙が届かなくて、所在が分からなかったり、万一、元取締役が亡くなっていて、相続人が分からなかったら、どうすればいいかい。
この場合も、裁判所の決定を得れば、所在や氏名が不明な共有者以外の共有者の持分の過半数により、管理に関する事項を決定することができるとされていますから、先代社長の同意で管理方法が決定できることになります。ただし、単に手紙が届かないというだけでは不十分で、住民票の調査等を尽くしても、共有者の氏名や所在が不明である場合に限られます。
なるほど。元取締役から返事が来なくても、また、所在が分からなくても、適法に管理ができるわけだな。まずは、父と相談して元取締役に一度連絡を取ってみるよ。当社としては、この砂利道を円満な形で使い続けて行きたいと思うからね。
今までご説明した点以外でも、共有については、所在が分からない共有者の持分の取得等いくつも改正がなされています。社長がこの共有の土地を、今後どうしていきたいかを含めて、一度事務所でゆっくり相談しませんか。
そうだね。資料を揃えて相談に行くよ。
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