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残業代の値上げと賃金のデジタル払い 令和5年4月に改正労働基準法施行

中部経済新聞2023年2月掲載
残業代の値上げと賃金のデジタル払い 令和5年4月に改正労働基準法施行

【時間外労働の割増賃金率の引き上げ】
4月から残業の際に支払う賃金の金額が増えると聞いたのですが、本当ですか。
労働基準法の改正の話ですね。正確には、中小企業は増えますが、大企業は現在と変わりません。
どういうことですか。
平成22年4月の労働基準法の改正で、月に60時間を超える残業についての割増賃金率が50%に引き上げられていました。ただ、中小企業に関しては、経済的な負担が大きいと、引き上げを猶予し、割増賃金率を25%のままにしていました。4月1日以降は、両方とも50%になります。
なるほど、倍に増えることになるのか。初歩的な質問だけど、大企業と中小企業ってどう区別するんでしたっけ。
図のとおりです。
業種別.jpg
(厚生労働省ホームページより引用)
ありがとう。じゃあ、残業時間が月に60時間以下の場合はどうなりますか。
その場合は大企業も中小企業も割増賃金率は25%のまま変わりません。
良かった。従業員には残業時間が月に60時間を超えないように指示しておこう。法改正で、その他変更点ありますか。
月60時間を超える時間外労働を深夜に行わせる場合、割増賃金率が75%に増加することになりました。気を付けてください。
深夜とは何時から何時までのことだっけ。
午後10時から翌朝の午前5時までです。深夜労働であれば、月60時間以内でも、深夜割増賃金率になるので、25%を加算しなければなりません。
また、月60時間の時間外労働時間の算定には、所定休日に行った労働は含まれますが、法定休日に行った労働時間は含まれません。
所定休日と法定休日とは何ですか。
労働基準法により、使用者は、労働者に対して、毎週少なくとも1回の休日を与えなければならないと定められています。この法律によって定められた休日を法定休日と呼んでいます。会社は、週1回労働者に休日を与えることが義務付けられているので、もし毎日働かせていれば、労働基準監督署の指導の対象になるだけでなく、刑事罰を受ける可能性もあります。法定休日の割増賃金率は35%です。
そして、法定休日とは別に会社が定めた休日を所定休日といいます。一般的に週休2日制で休日を定めている場合、法定休日を日曜日、所定休日を土曜日に定めている会社が多いと思います。
分かりました。残業での割増賃金を抑える方法とかないですかね。
特別な事情でやむを得ず時間外労働を行わざる得ない場合もありますので、労使協定により、割増賃金の支払いに変えて、有給の休暇を与えることができるようになっています。代替休暇といいます。大企業では平成22年4月から可能でしたが、中小企業は今回の法改正で認められるようになった制度です。
事前に過半数の労働者がいる組合か過半数の労働者の代表者と代替休暇が取れる期間などについて協定を結んだ上で、就業規則に定めておく必要があります。年次有給休暇とは異なるもので、代替休暇取得日はいわゆる有給休暇としてはカウントされません。
繁忙期に月60時間超える可能性があるから、代替休暇の制度整えておこうかな。ところで、賃金の支払い方法も変わるって聞いたんだけど本当?
【資金移動業者の口座への賃金支払い】
はい、4月1日に労働基準法施行規則を改正し、資金移動業者の口座への賃金支払いが可能となりました。資金移動業者というのは、〇〇PAYのように銀行等以外で銀行業務に準じた行為を行う者のことです。平たく言えば、給料をデジタルで支払えるようになるという感じでしょうか。
何か条件とかあるの。
資金移動業者へ賃金を振込むには、労働者が資金移動業者を利用することについて同意することが必要です。
ただ、実際に資金移動業者の口座への賃金支払いが可能になるのはしばらく先になると思います。
そうか、その間に従業員には資金移動業者を使いたいか聞いておこうかな。
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