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所有者不明土地・建物管理制度とは

中部経済新聞2022年12月掲載
所有者不明土地・建物管理制度とは

友人が隣の家のことで困っているみたいなんだよ。
どうしたんですか?
長い間、空き家になってしまっていて、枝が庭に入って来たり、夏には雑草が生い茂って蚊が大量に発生したりと大変みたいなんだ。
空き地や空き家が問題となっていますからね。そのような問題に対応するために、民法が改正され、令和5年4月1日から施行されることになっているんですよ。
どんな改正がなされたんだい?
所有者不明土地・建物管理制度の創設がなされました。
所有者不明土地・建物管理制度
裁判所は、所有者不明土地・建物について、必要があると認めるときは、利害関係人の請求により、所有者不明土地管理人による管理を命ずる処分(所有者不明土地管理命令)をすることができるようになりました。
所有者不明土地というのは、誰の所有か分からない土地ということかな?
「所有者不明土地」とは、相続登記がされないこと等により、
1 不動産登記簿等を参照しても、所有者が直ちに判明しない土地や、
2 所有者が判明しても、所有者に連絡がつかない土地
をいいます。
所有者に連絡がつかない土地も含まれるんだね。
そうなんです。連絡がつかないと適切な管理を求めることができないからです。
所有者不明土地管理人の権限
所有者不明土地管理人はどんなことができるんだい?
所有者不明土地管理人は、所有者不明土地管理命令の対象とされた土地等の管理、及び処分をする権限を有することになります。
ただ、一定の行為をする場合には、裁判所の許可を得なければならないとされています。
一定の行為とは、どんな行為なのかな?
草木の伐採など現状を維持するような保存行為については、裁判所の許可を得ないで行うことができますが、売却などの処分行為は裁判所の許可を得る必要があります。
また、所有者不明土地等の性質を変えない範囲において、その利用又は改良を目的とする行為については、裁判所の許可を得ないで行うことができます。
財産の処分や性質を変えるような行為は裁判所の許可が必要であるということだね。
そうです。所有者の利益に配慮する必要があるからです。
所有者不明建物管理人
同様に、建物の所有者が不明な場合や連絡がつかない場合には、裁判所は、所有者不明建物管理人による管理を命じる処分(所有者不明建物管理命令)をすることができます。
建物の場合は、老朽化により危険な場合がありそうだね。
そのような場合は、所有者不明建物管理人が、保存行為として、修繕することができます。
なるほどね。所有者が不明な場合や連絡がつかない場合は、所有者不明土地管理人や所有者不明建物管理人により管理がなされるということだね。
管理不全土地・建物管理制度
それでは、所有者に連絡しても、草木の伐採など適切な対応をしてくれない場合は、どうしたらいいのかな?
裁判所は、所有者による土地の管理が不適当であることによって他人の権利又は法律上保護される利益が侵害され、又は侵害されるおそれがある場合において、必要があると認めるときは、利害関係人の請求により、管理不全土地管理人による管理を命ずる処分(管理不全土地管理命令)をすることができるようになりました。
管理がなされないことで他人の権利が侵害されるおそれがあるような場合に認められるということだね。
そうです。そのような場合には、管理不全土地管理人は、保存行為や性質を変えない範囲内において、利用や改良を目的とする行為をすることができます。
所有者不明土地管理人と同じように、処分行為や性質を変えるような利用や改良を目的とする行為は裁判所の許可が必要であるのかな?
そうです。ただ、裁判所が許可をするには、所有者の同意を得なければならないとされています。
どういうことかな?
処分行為など影響が大きな行為は、所有者の利益に配慮する必要があるため、所有者の同意を必要としているわけです。
適切な管理をしていないとはいえ、所有者が不明である場合とは異なるからだね。
そうです。
同様に、管理が不適当な建物の場合には、裁判所は管理不全建物管理人による管理を命じる処分(管理不全建物管理命令)をすることができます。
なるほどね。所有者不明土地・建物管理制度や、管理不全土地・建物管理制度についてよく分かったよ。
令和5年4月1日に施行されるので、所有者が不明な土地・建物の問題で困っている人は、制度の利用を検討してみるとよいと思います。
友人に所有者不明土地・建物管理制度について伝えてみるよ。
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