愛知県弁護士会トップページ> 愛知県弁護士会とは > ライブラリー > 成年後見人の選択

成年後見人の選択

【質問】

 将来、自分が認知症等になって判断能力が衰えた場合には、家族の中で一番信頼できる長男に財産の管理や施設の入所に関する契約等をしてもらいたいと思っています。長女や次男には関与してほしくありません。

 成年後見制度(法定の後見制度)では、後見人を自分で選ぶことができないと聞きました。認知症になった場合の財産管理を自分が選んだ人にしてもらう方法はありますか。

【回答】

 あなたが判断能力のある時点で、長男との間で任意後見契約を締結しておくことで、あなたの判断能力が不十分になってからの財産管理を長男に行ってもらうことができます。

 任意後見契約は、将来の財産管理等に関する事務を行う者や行われる事務の内容を、本人が判断能力のある時点であらかじめ決めておく委任契約の一種で、必ず公正証書で行わなければなりません(公証人が関与することで、本人の真意による適切かつ有効な契約が締結されることを担保しています。)。

 任意後見契約に関与した公証人は、職権で法務局に任意後見契約について登記申請します。任意後見契約が登記されている場合、原則として、任意後見契約が法定の後見制度よりも優先します。

 あなた本人の利益のために法定の後見制度が必要な特別な事情がない限り、あなたの判断能力が落ちてから、長女や次男が後見開始申立(法定の後見制度)を行っても、後見開始の審判はなされません(なお、法定の成年後見制度の場合、申立時に指定した後見人候補者が後見人として選ばれるとは限らず、「家庭裁判所が誰を成年後見人に選んだか」についての不服申立もできません。)。

 任意後見契約では、本人が認知症等で判断能力が衰えたら、任意後見受任者(あなたの場合は長男)等が、「任意後見監督人の選任申立」を家庭裁判所に行う必要があります。

 任意後見監督人には、専門家の第三者が選ばれ、任意後見人が本人のために適切に財産管理を行っているかを監督します(本人であるあなたの財産から、月額1~3万円程度の報酬が支払われることになります。)。この任意後見監督人が選任された時から、任意後見契約は効力を生じます。

 あなたの任意後見人になった長男は、任意後見監督人に対して、あなたの財産管理について定期的に報告を行う必要があります(任意後見監督人は家庭裁判所に定期報告を行います。)。

 任意後見契約公正証書の作成にあたっては、様々な考慮事項がありますので、一度、弁護士に相談されることをお勧めします。