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不正競争防止法とは 事業者間の適正な競争の実現めざす

中部経済新聞2022年10月掲載
不正競争防止法とは 事業者間の適正な競争の実現めざす

著名な回転寿司チェーンの運営会社の社長が,ライバルチェーンの営業秘密データを不正に持ち出して逮捕されたってニュースを見たよ。
不正競争防止法違反の疑いで逮捕されたという報道がありましたね。
不正競争防止法というのはあまり耳慣れない法律だけど,どういった法律なのかな。
不正競争防止法は,不正競争によって営業上の利益を侵害され,または侵害されるおそれのある者に対し,差止請求権等を付与して不正競争の防止を図り,営業上の利益が侵害された者の損害賠償に関する措置等を整備することで事業者間の公正な競争を確保しようとする法律です。
不正競争というのはどういうことなの。
不正競争防止法が定める不正競争は,①混同惹起行為,②著名表示冒用行為,③他人の商品の形態を模倣した商品を譲渡等する行為,④営業秘密に係る不正行為,⑤限定提供データに係る不正行為,⑥技術的制限手段に対する不正行為,⑦ドメイン名に係る不正行為,⑧誤認惹起行為,⑨信用毀損行為,⑩代理人等の商標冒用行為です。
色々とあるんだね。
不正競争防止法は昭和9年に制定されて以降,社会経済の発展に伴って何度か改正され,不正競争も追加,修正されてきました。最新のものは,平成30年の改正で加わった⑤限定提供データに係る不正行為ですね。
それはどういうものなのかな。
いわゆるビッグデータ等を念頭に置いたもので,商品として広く提供されるデータ等,事業者等が取引を通じて第三者に提供するデータを不正な手段で取得する行為等を不正競争とするものです。限定提供データの要件の考え方等については,経済産業省が「限定提供データに関する指針」というガイドラインを公表しています。
回転寿司チェーンの話だと,④営業秘密に係る不正行為があったってことなのかな。これはどういうものなんだろう。
不正な手段で営業秘密を取得したり,取得した営業秘密を使用,開示したりする行為等が不正競争とされています。
ニュースでは不正に持ち出したのは商品に使われる食材の原価や使用量等に関するデータだって話だったけど,これが営業秘密なのかな。営業秘密ってどういうことなの。
不正競争防止法の営業秘密は,「秘密として管理されている生産方法,販売方法その他の事業活動に有用な技術上又は営業上の情報であって,公然と知られていないもの」と定義されており,①秘密管理性,②有用性,③非公然性の三要件を満たす情報が営業秘密として保護されます。
②と③は分かりやすいけど,どういう管理をしていれば,①の秘密として管理されている情報と言えるんだろう。
営業秘密を保有する事業者が当該情報を秘密であると単に主観的に認識しているだけでは十分ではなく,保有者の特定の情報を秘密として管理しようとする意思(秘密管理意思)が,具体的状況に応じた経済合理的な秘密管理措置によって従業員等に対して明確に示され,秘密管理意思に対する認識可能性が確保される必要があるとされています。営業秘密として法的保護を受けるために必要となる最低限の水準の対策を示すガイドラインとして,経済産業省が「営業秘密管理指針」を公表していますので,参照していただくとよいでしょう。「営業秘密管理指針」では,秘密管理措置の具体例として,紙媒体の場合については,ファイルの利用等により一般情報からの合理的な区分を行った上で,当該文書に「マル秘」など秘密であることを表示する方法や,個別の文書やファイルに秘密表示をする代わりに,施錠可能なキャビネットや金庫等に保管する方法等が挙げられています。また,電子媒体の場合については,記録媒体にマル秘表示を貼付する方法,電子ファイル名,フォルダ名にマル秘を付記する方法,電子ファイルそのもの又は電子ファイルを含むフォルダの閲覧に要するパスワードを設定する方法等が挙げられています。
そのくらいはやっていないと,営業秘密として保護されないということか。
また,情報に対する秘密管理措置が形骸化してその実効性を失い,従業員が企業の秘密管理意思を認識できない場合は,適切な秘密管理措置とはいえないという指摘があることにも注意が必要です。秘密表示等を行っているにもかかわらず,情報の内容から当然に一般情報であると従業員が認識する情報が著しく多く含まれる場合には,秘密管理措置の形骸化と評価されることがあり得ます。施錠可能なキャビネットや金庫等に保管する方法で,施錠や鍵の管理がずさんな場合等も適切な秘密管理措置とはいえません。
何にでもマル秘と付けるようになってはだめということか。我が社も営業秘密の管理を見直してみるかな。また相談に乗ってよ。
実効的な営業秘密の管理のためには検討すべきことが多くあります。いつでもお気軽にご相談ください。
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