◆特別養子縁組という選択

	息子夫婦がなかなか子どもを授かれないと悩んでいてね。特別養子縁組を考えていると言われたんだけど。特別養子縁組って、どんな制度なんだい。
	社長は普通の養子縁組はご存じですか。
	普通の養子縁組なら知っているよ。法的に親子となる制度だよね。
	そうですね。 普通養子縁組と特別養子縁組の一番大きな違いは、普通養子縁組の場合、養子縁組をしても養子と実親との関係は消滅せずに、養子と養親の関係とともに二重に親子関係が続きますが、特別養子縁組の場合は、養子と実親との親子関係は消滅して、養子と養親との親子関係のみとなります。
	実親との関係を消滅させるのはどうしてかな。
	特別養子縁組は、様々な事情により実の親のもとでは暮らせない子どものための制度です。養親との関係を実親子の関係に準じた安定した関係とするために生みの親と子どもの関係を断って、育ての親と新しい親子関係を築いていくことになります。戸籍上の表記も「養子」ではなく「長男」「長女」等の記載がされるんです。
	へぇ、そうなんだ。他にも違いはあるのかな。
	特別養子縁組の場合、養子は原則１５歳未満であることが必要です。
	年齢制限があるんだね。
	はい。以前は原則６歳未満という制限でしたが、令和２年４月より養子の年齢は原則１５歳未満まで引き上げられました。 また、養親となる者は原則２５歳以上の夫婦であることが必要とされています。
	息子の妻は３６歳だけど。息子は２４歳だから、２５歳になるまで養親にはなれないのかな。
	いいえ、夫婦の一方が２５歳以上の場合は、もう一方が２０歳以上であれば大丈夫です。
	縁組する場合の手続きはどうすれば良いのかな。
	普通養子縁組の場合、養親と養子の同意で縁組が成立しますが、特別養子縁組の場合は、家庭裁判所の決定が必要となります。

◆二段階の審判手続き

	特別養子縁組の手続きは、①特別養子適格の確認審判と②特別養子縁組成立の審判と二段階で行われます。
	①特別養子適格の確認審判というのはどのような手続きなんだい。
	①特別養子適格の確認審判は、実親の養育が著しく困難または不適当であることや実親の同意の有無から、その子どもが特別養子となるのに適しているか確認するための審判です。養親になろうとする夫婦や児童相談所の所長が申し立てることができます。
	実親の同意は必ず必要なのかい。
	原則必要ですが、実親が病気で意思表示ができない場合や、実親から子どもに対して虐待がある場合などは例外的に実親の同意は不要とされています。
	実親が同意した後にやっぱりやめたいと思うこともあるのかな。
	実親が特別養子縁組に同意した後２週間が経過すると、その同意を撤回することができなくなります。以前は、特別養子縁組の成立まで、実親が同意を撤回することができたため不安定な面がありましたが、養親にとって安心して進められる手続きとなっています。①特別養子適格の確認審判が確定すると、養子の実親は②特別養子縁組成立の審判には関与できなくなります。
	②特別養子縁組成立の審判はどんな手続きになるのかな。
	養親と養子のマッチングを判断する審判となります。試験的に養親が養子と同居して６か月以上監護した状況から裁判所が判断します。

◆特別養子縁組の解消

	特別養子縁組が成立した後、うまくいかなかったら関係を解消することはできるのかな。
	養親からの離縁請求は認められていません。特別養子縁組を離縁するには家庭裁判所による審判が必要です。養子、実親、検察官の請求により、養親による虐待、悪意の遺棄等養子の利益を著しく害する事由があって、実父母が相当の監護をすることができて、養子の利益のため特に必要がある場合に離縁が認められます。離縁が成立すると、養子と実親との親子関係が復活します。
	基本的に離縁することはできないんだね。
	そうですね。実親子と同様の関係となるわけですから、覚悟をもって縁組をする必要がありますね。
	養子となる子はどこで紹介してもらえるのかな。
	児童相談所や許可を受けた民間の養子縁組あっせん事業者がありますので相談してみてください。
	今日聞いた話を長男夫婦にも伝えておくよ。
	子どもは特定の大人の愛情に包まれて育つことで、自己肯定感が生まれると言われています。実親が養育することが難しい子どものためにも、特別養子縁組の利用が増えるとよいですね。

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