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中部経済新聞2022年4月掲載
「成年年齢」の引き下げと少年法改正
中部経済新聞2022年4月掲載
「成年年齢」の引き下げと少年法改正
19歳の人が刑事事件で起訴されたって事件が実名報道されていたね。 | |
「特定少年」ということで議論になっていますね。実名報道については報道機関によって対応が分かれたようですが。 | |
「特定少年」って何だろうか。 | |
成年年齢が4月から18歳に引き下げられたことにあわせて,少年法も改正されました。 | |
そうか。19歳は成人になるのか。 | |
ただ,18・19歳の者は,成長途上にあり,罪を犯した場合にも適切な教育や処遇による更生が期待できます。成人と同様の刑事手続により処罰するよりも,少年法により,少年を保護し,更生させることの方が社会にとってよいと考えられます。 そこで成年年齢が引き下げられたとしても,引き続き,少年法の適用は受けることにしました。 | |
でも成人となると,社会に対してそれなりの責任をもつべきじゃないの。 | |
そこで今回の少年法改正では,18・19歳の者が罪を犯した場合には,その立場に応じた取扱いとするため,「特定少年」として,17歳以下の少年とは異なる特例を定めたのです。 | |
なるほど。どのように改正されたのかな。 | |
大きなポイントとしては,先にお話ししましたとおり①引き続き少年法が適用される,ということのほか,②原則逆送事件の拡大,③実名報道の解禁が指摘されています。 《少年事件》 | |
まず,罪をおかした少年がどのように処分されるかをご説明します。 少年事件は,犯罪をしたという疑い(嫌疑)がある限り,全ての事件が捜査機関(警察・検察)から家庭裁判所に送られます。 そして,家庭裁判所では,犯罪に関する事実のほか,少年の生い立ち,性格,家庭環境などについても調査をした上で,少年に対する処分を決定します。 | |
単に処罰することだけが目的でないということだね。 | |
そうですね。この家庭裁判所の決定には,検察官送致(逆送),少年院送致,保護観察などがあります。 「逆送」とは,家庭裁判所が,保護処分ではなく,懲役,罰金などの刑罰を科すべきと判断した場合に,事件を検察官に送るものです。逆送された事件は,検察官によって刑事事件として裁判所に起訴され,刑事裁判で有罪となれば刑罰が科されます。 | |
成人と同じ手続きになるんだね。 | |
これに対して,少年院送致と保護観察はいずれも保護処分であり,刑事裁判として科される懲役,罰金などの刑罰とは異なります。 少年院送致は少年を少年院に収容して処遇を行う処分,保護観察は少年に対して社会内で処遇を行う処分で,少年の更生を目的として家庭裁判所が課す特別な処分です。 《原則逆送事件》 | |
なるほど。今回の改正は②「逆送」に関することがポイントの一つだったね。 | |
はい。「逆送」とは先にお話ししたように保護処分ではなく,刑罰を科すべきと判断されるものですが,少年法では,特別に重い事件については原則として「逆送」にしなければならないと定めています。 今までは16歳以上の少年のとき犯した故意の犯罪行為により被害者を死亡させた罪(殺人罪,傷害致死罪など)の事件がその対象でした。 | |
この範囲が拡大されたんだね。 | |
はい。今回の改正で,これに加え,18歳以上の少年のとき犯した死刑,無期又は短期(法定刑の下限)1年以上の懲役・禁錮に当たる罪の事件が追加されました。 これにより,「特定少年」については,例えば,現住建造物等放火罪,強制性交等罪,強盗罪,組織的詐欺罪などが新たに原則逆送対象事件となります。 | |
なるほど。「特定少年」は成人だから,重大な事件については,17歳以下の少年とは異なり,相応の責任を負うべきということだね。 | |
はい。ただ,①少年法の適用は引き続きありますので,まずは家庭裁判所によって判断がなされるという点は20歳以上とは異なります 《実名報道》 | |
③実名報道についてはどう改正されたのかな。 | |
特定少年については,氏名,年齢,職業,住居,容ぼうなどによって犯人が誰であるかが分かるような記事・写真等の報道(推知報道)は原則として禁止されるものの,逆送されて起訴された場合(略式手続の場合は除く)には,その段階から,推知報道の禁止が解除されることとなりました。 | |
それで今回実名報道されたんだね。 | |
ただ,本当に実名報道する必要があるのかは疑問です。成長途上にある者を,実名報道することによって社会的な批判・論評の対象とすることが果たして適当なのかは十分検討する必要があります。 | |
確かに実名報道が与える影響は大きいからね。そうはいっても成人だしなあ。来年18歳になるうちの子と議論してみるか。 |
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