愛知県弁護士会トップページ> 愛知県弁護士会とは > ライブラリー > 中部経済新聞2021年11月掲載
「所有者不明土地」の解消に向けた法改正 相続登記の申請を義務化

中部経済新聞2021年11月掲載
「所有者不明土地」の解消に向けた法改正 相続登記の申請を義務化

先日、父が亡くなって、相続手続をしている最中なんだけど、父の遺産の中に、北海道の土地があってね。その土地が原野で使い道もなさそうで、兄弟が誰も相続したがらないんだ。いらない土地でも、相続手続をしないといけないのかな。
相続手続としては、共同相続人で遺産分割協議をした上で、その土地を取得する相続人が、相続登記をすることが必要です。これまでの法制度では、相続登記は任意だったので、正直なところ、相続登記をせずに放置しておくことができました。しかし、令和3年4月に「所有者不明土地問題」を防ぐために法律改正がされて、相続登記の申請が義務化されました。
「所有者不明土地」って何かな。
不動産登記簿により所有者が直ちに判明しない土地や、所有者が判明しても、その所在が不明で連絡が付かない土地のことです。近年では、そうした所有者不明土地が管理されずに放置されていることが問題となっていました。
相続登記の申請が義務化されたってことだけど、相続登記の申請をしないとどうなるのかな。
正当な理由がないのに、相続登記の申請を怠ったときは、10万円以下の過料が科せられます。
それは大変だ。私も早く相続登記の申請をしないといけないかな。
制度自体は、令和6年からスタートする予定なので、まだ急ぐ必要はありません。
ちょっと安心したけど、いつまでに相続登記をすればいいのかな。
令和6年に制度が開始された場合、相続の開始を知り、かつ、相続によって不動産を取得したことを知った日から3年以内に相続登記の申請をしなければなりません。
 制度開始前に相続が発生したケースについても、制度開始から3年以内に相続登記の申請が必要となります。
でも、相続人の間で遺産分割の争いが起きたりして、取得者や持分割合とか決まらないまま3年以上経ってしまう場合もあると、よく聞くけど、その場合には、どうしたらいいのかな。
相続登記がすぐにできない場合でも、相続人が申請義務を簡易に履行できるようにするために「相続人申告登記」が新設されます。
 相続人は、①その不動産の所有権の登記名義人について相続が開始したこと、②自分がその相続人であること、を申告すれば、申請義務を履行したとみなされます。
 「相続人申告登記」がされていれば、登記簿上は、少なくとも、相続人の住所・氏名が記載されるので、登記簿を見ることで相続人を容易に把握することができるようになります。
相続人申告登記をした後に、遺産分割協議が成立した場合は、どうしたらいいのかな。
遺産分割が成立した場合には、遺産分割成立日から3年以内に、その内容を踏まえた登記申請をすることも義務付けられています。
遺産分割が成立しない場合にはどうしたらいいのかな。
遺産分割が成立しなければ、それ以上の登記申請は義務付けられていないので、相続人申告登記をしたまま、ということになります。
なるほどね。とりあえず、相続人申告登記がされていれば、相続人を容易に把握できるから良いってことか。
ところで社長、今回の法改正では、新しく「相続土地国家帰属法」が制定されて、相続によって土地の所有権を取得した相続人が、土地を手放して国庫に帰属させることができる制度ができました。
もしかして、父の遺産の北海道の原野も手放すことができるってことかな。
不要な土地を何でも国庫に帰属させることができるとすると国の負担が大きくなってしまうので、建物が建っていない、担保権や賃借権が設定されていない、土壌汚染がない、境界が明確である、といったいくつかの条件をクリアする必要はあります。
 また、土地管理費相当額の負担金も納付する必要があります。一般的には原野で約20万円、市街地の宅地だと約80万だそうです。
北海道の原野は固定資産税も僅少だし、管理もほとんどする必要がないことを考えると、20万円を払って国庫に帰属させるかどうかは悩ましいなぁ。でも、そういう制度があるのを知れたのは良かったよ。兄弟にも相談して、利用を検討してみるよ。
是非そうしてください。その他にも相続手続で困ったことがあれば、いつでも相談してください。
愛知県弁護士会では、愛知県下11か所で、法律相談センターを開設しています。
(名古屋駅前、三の丸、岡崎、豊田、西尾、豊橋、新城、半田、一宮、犬山、津島)
私たち弁護士が、様々な法律問題に親身になってご相談に乗ります。
どうぞお気軽にご相談ください。

法律相談センターのページはこちらから