愛知県弁護士会トップページ> 愛知県弁護士会とは > ライブラリー > 中部経済新聞2021年6月掲載
騒音トラブルに対する対処方法

中部経済新聞2021年6月掲載
騒音トラブルに対する対処方法

騒音トラブルって多いのかな。
どうかしましたか。
実は私の娘は賃貸アパートで独り暮らしをしているんだが,勤務先からリモートワークを命じられ,今,アパートで仕事をしているんだよ。
なるほど。
今までは会社で働いていたから気づかなかったようだが,隣の人の騒音がうるさくてリモートワークにも支障が出ているようなんだよ。
それは困りましたね。
それとなく注意できる関係ならいいけれど,隣の人がどんな人かわからないし,直接苦情を言うのは怖いよね。なんとかならないだろうか。
騒音については,環境基本法に基づいて,環境省が「人の健康を保護し,生活環境を保全する上で維持されることが望ましい基準(環境基準)」を定めています。例えば住宅地の騒音基準は昼間で55デシベル以下,夜間で45デシベル以下とされています。ほかにも,地方自治体で条例により基準を設けているところもあります。
それを超えると騒音になるということかな。
生活騒音を直接規制するものではなく,騒音は聞く者の感じ方,音の種類の問題もありますので,一つの目安として理解してください。
確かにストレスに感じる音の種類とかもあるよね。
そうですね。
ただ,実際に仕事に支障が生じて困っているのですから,まずは隣の人に騒音に気付いてもらい,自制してもらえるようにするのがよいですね。
直接言いにくいのであれば,大家さんや管理会社,分譲賃貸であれば管理組合などに相談して注意喚起してもらうのがよいと思います。
娘が苦情を言ったことがわかってしまい,何か嫌がらせとかされないかな?
まずは住民の全員に対して騒音を出さないよう注意を促す告知をしてもらうようお願いするということも考えられますね。
注意喚起してもおさまらない場合はどうすればよいのかな。
法的手続きを念頭に考えざるをえませんね。
誰にどのような請求をするか,という問題がありますが,①騒音の発生源である住民に対する請求,②大家さんに対する請求,③建物の販売会社等に対する請求などが考えられます。
なるほど。
①騒音の発生源である住民に対する請求は,例えば,騒音によって,頭痛や不眠,うつ症状などの健康被害が生じたなどと不法行為責任を追及することが考えられます。
ただ,生活騒音というのは,ある意味,お互い様というところもあるので「受忍限度」を超えるような騒音かどうか,ということが問題になります。
受忍限度とはどういう意味かな。
簡単に言うと,一般人が社会通念上,がまん (受忍) できる被害の程度かどうかということです。
確かに日常生活の全ての音を違法な騒音とすると,日常生活を送れなくなるね。
そうですね。最高裁は,生活騒音に関する事案ではないですが,その判断基準について「侵害行為の態様と侵害の程度、被侵害利益の性質と内容、侵害行為の持つ公共性ないし公益上の必要性の内容と程度等を比較検討するほか,被害の防止に関して採り得る措置の有無及びその内容,効果等の事情をも考慮し,これらを総合的に考察して決すベきものである」と述べています。
難しいね。
ポイントとしては様々な事情を比較検討して,総合的に判断するということです。ですから,法的手続きをとる際には,何デシベルの音を出しているか,ということだけでなく,様々な事情を検討しておく必要があります。
なるほどね。いろいろ準備が必要だね。
②大家さんに対する請求ですが,大家さんは,賃貸借契約上,入居者に対して平穏な居住環境を提供するという,貸主としての責務を負います。ですので,隣人の騒音に対して適切な対応をとってくれなかった場合には,その責任を追及することが考えられます。
大家さんに苦情を言っても対処してもらえなかったような場合に問題になるんだね。
③販売会社に対する請求ですが,例えば,そもそも防音の工事が適切でないために騒音が生じている場合については,建物の欠陥について責任を追及することが考えられます。
ただし,請求主体は,原則としてその建物,あるいは部屋の所有者です。
大家さんや分譲マンションの部屋のオーナーだね。
法的手続きについても,訴訟だけでなく,話し合いの手続きを利用することも検討すべきです。
訴訟以外の手続きとはどんなものかな。
例えば,調停や,愛知県弁護士会の紛争解決センターによるあっせん手続きなどがあります。
隣に住んでいる人との争いであれば,話し合いで解決できた方がよいよね。
そうですね。また,隣の人にはなかなか言いにくいこともあるので,できれば弁護士を利用していただくとよいと思います。
そうだね。当事者間の話し合いだと,感情的になってトラブルが大きくなることもあるからね。娘に話してみるよ。
愛知県弁護士会では、愛知県下11か所で、法律相談センターを開設しています。
(名古屋駅前、三の丸、岡崎、豊田、西尾、豊橋、新城、半田、一宮、犬山、津島)
私たち弁護士が、様々な法律問題に親身になってご相談に乗ります。
どうぞお気軽にご相談ください。

法律相談センターのページはこちらから