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中部経済新聞2021年5月掲載
公益通報者保護法の改正
-早期是正で被害防止-
中部経済新聞2021年5月掲載
公益通報者保護法の改正
-早期是正で被害防止-
なかなか事業者の不祥事がなくならないね。 リコール隠しや食品偽装は,組織的に隠ぺいされると,発覚しづらいのかな。 | |
そうですね。内部からの告発がないとなかなか是正できないでしょうね。 | |
そういえば内部告発した人を保護する法律が改正されたと新聞で読んだな。 |
【公益通報者保護法の改正】
公益通報者保護法の改正ですね。 昨年6月に改正法が成立し,来年6月までに施行される予定です。 | |
どういう法律なんだい? | |
労働者が,勤務先の不正行為を,不正の目的でなく,勤務先内部や,権限のある行政機関など一定の通報先に通報することを「公益通報」といいます。 | |
不正が明るみになるきっかけだね。 | |
はい。 ただ,そのことで勤務先から解雇や降格などの不利益な取扱いを受けるおそれがあります。 そこで,公益のために通報を行った労働者を保護することで不正を是正する機会を確保し,国民の生命,身体,財産を保護することを目的とした法律です。 | |
その法律がどのように改正されたのかな。 | |
公益通報の実効化を図るために,大きく分けると①事業者自ら不正を是正しやすくし,労働者が安心して通報を行いやすくするための改正,②行政機関等への通報を行いやすくするための改正,③通報者がより保護されやすくするための改正がなされています。 | |
実効性の確保は重要だね。 |
【体制の整備等の義務化】
①事業者自ら不正を是正しやすくし,労働者が安心して通報を行いやすくするための改正として,事業者に対し,内部通報に適切な対応をするために必要な体制の整備等を義務付けました。 中小事業者(従業員数300人以下)は努力義務となります。 | |
必要な体制の整備とは? | |
はい。 改正法は,事業者に対し,新たに,公益通報対応業務従事者を定める義務と,内部の労働者等からの公益通報に適切に対応する体制の整備その他の必要な措置をとる義務を課しています。 公益通報対応業務従事者の定め方ですが,個別に担当者を指定する方法や,内部規程において一定の役職に従事する者,弁護士などの外部の第三者を定めるなどの方法が考えられます。 体制の整備その他の必要な措置の内容は,例えば,通報受付窓口の設定,社内調査・是正措置,公益通報を理由とした不利益取扱いの禁止や公益通報者に関する情報漏えいの防止,これら措置に関する内部規程の整備・運用等が想定されます。 | |
難しいな。 | |
改正法が施行されるまでに指針が策定される予定ですよ。 | |
そうか。指針を参考にするよ。 | |
行政機関は,この事業者の義務の履行に関しては,助言,指導,勧告といった行政措置がとれるほか,勧告を受けた事業者がこれに従わないときは公表できることとされました。 さらに,行政機関へ虚偽報告を行った場合の過料処分も定められましたので,十分注意してください。 | |
わかったよ。 | |
そのほか,通報に対応した者が,通報者に関する情報等を漏らしてトラブルに発展したりして,通報制度への信頼性が損なれわないよう,公益通報対応に従事した者に対し,公益通報対応業務に関して知り得た公益通報者を特定させる情報を,正当な理由なく漏らしてはならないとの守秘義務を課しました。 | |
安心して通報を行いやすくなるね。 |
【行政機関等への通報】
②行政機関等への通報を行いやすくするという点ですが,現行法では,行政機関へ通報したことについて通報者が保護されるためには「通報対象事実があると信じることについて相当の理由がある場合(真実相当性)」が必要とされていました。 しかし,労働者にとっては,その要件を満たしているのか判断が難しいという問題がありました。 そこで,通報対象事実があると考え,通報者の氏名や通報対象事実があると思う理由等を記載した文書(電子メールを含む)を提出した場合の通報を保護の対象に加えました。 | |
通報者が,氏名や通報すべき事実があると考えた理由等を明らかにした文書で通報すれば,真実相当性までの判断はいらないわけだね。 | |
そうです。 また,マスコミ等への通報の保護要件については,現行法では,個人の生命・身体に対する危害が発生する場合や発生する急迫した危険があると信じるに足りる相当の理由がある場合を保護の対象としていますが,これに加え,財産に対する損害(回復困難又は重大なもの)に関する通報,内部通報をした場合,通報者を特定させる情報が漏れる可能性が高い場合の通報についても,他の要件を満たせば保護の対象になりました。 | |
勤め先に通報しにくい場面もあるからね。 |
【保護対象の拡大】
③通報者がより保護されやすくするための改正としては,保護される対象として,退職者(退職後1年以内)や役員が加わったほか,保護される通報の内容についても,一定の刑事罰の対象となる行為に加えて行政罰の対象となる行為も通報対象事実に加わりました。 また,保護の内容も,解雇や不利益変更の禁止だけでなく,通報に伴う損害賠償責任の免除も加わりました。 | |
確かに実効性ある改正といえそうだな。 | |
事業者にとっては,マスコミなど第三者への通報がなされた場合のダメージは大きいですから,事業者内できちん不正を是正できるよう体制を整えることが重要ですね。 | |
我が社の体制も,指針がでたところで見直すから,そのときは相談するよ。 |
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