【独占禁止法の令和元年改正】

	改正された独占禁止法が昨年１２月に施行されたと聞いたよ。何がどう変わったのかな。
	大きなところでは①課徴金制度が見直されました。また、その制度を活用しやすくするために②弁護士と依頼者との間の一定の内容の通信が保護される判別手続が導入されました。

【①独占禁止法の課徴金制度】

	独占禁止法の課徴金ってどんな制度なのかな。
	独占禁止法は不当な取引制限等を禁止しており、その実効性を確保するために導入された制度で、違反行為に係る対象商品・役務の売上額等に一定の算定率を乗じた金額を支払わなければならないとされています。課徴金制度の導入以来、数回にわたる法改正により対象となる行為が拡大され、課徴金の算定率が引き上げられてきました。
	徐々に厳しくなっているんだね。今回の改正でも課徴金の算定率が引き上げられたのかな。
	おっしゃるとおりです。改正前は、業種別算定率があり、例えば小売業の場合３％（中小企業は１．２％）でしたが、今回の改正により業種別算定率は廃止されました。
	そうか。そうすると算定率は何％になるのかな。
	１０％が基本となります。
	えっ。当社は中小企業の小売業だから今までは１．２％だったのが、改正法で１０％になるということかい。
	必ずしもそうではありません。大企業の企業グループに属する場合を除いて中小企業の場合には算定率が軽減され、４％となります。
	当社は大企業の企業グループに属さない中小企業だから、４％となるわけだね。
	そうですね。その他にも、課徴金の算定基礎に、違反行為の対象となった商品・役務の密接関連業務の対価が追加されるなど、課徴金の額が増加する内容の改正であることに注意が必要です。

【調査協力減算制度】

	売上額の４％に相当する課徴金を課されると、経営に大きな影響があるなあ。ただ、違反行為を発見した場合、公正取引委員会に自主申告すれば、課徴金が減免される制度があったよね。
	社内調査によって不当な取引制限に係る違反行為を発見した場合、課徴金減免申請をすると申請順位に応じて課徴金が減免されます。
	課徴金減免制度も変わるのかな。
	はい。今回の改正により、課徴金減免制度に、調査協力減算制度が新設されます。
	公正取引委員会の調査に協力することで事業者にメリットがあるということかな。
	課徴金減免制度は、申請順位に応じて減免率が固定されています。令和元年改正法で新設された調査協力減算制度は、申請順位に応じた減免率に、事業者の実態解明への協力度合いに応じた減算率を付加する制度です。減算率については、事業者と公正取引委員会の間で協議、合意の上で決定されます。

【②判別手続】

	当社はちゃんとやっているつもりだけど、社内調査で独占禁止法違反が疑われる行為を発見した場合、課徴金減免申請をしたほうがよいのか、その時は相談するね。
	そうしてください。
	でも、例えば当社が調査対象となったら、公正取引委員会の調査官に、弁護士相談の内容を知られるのも嫌だな。秘密は保護されるのかな。
	今回の改正法の施行と同時に、公正取引委員会の規則が改正され、判別手続が新設されました。この手続を利用すれば、秘密は保護されますよ。
	どのような内容の相談が保護されるのかな。
	課徴金減免対象となる違反行為の疑いのある行為に関する法的意見について、事業者と弁護士との間で秘密に行われた通信を「特定通信」と定義されたのですが、この特定通信が保護の対象となります。
	どんな内容でも保護されるわけではないんだね。
	そうです。また、特定通信である旨を表示し、特定の保管場所で保管されていること等の一定の条件があります。
	事前の準備が必要ということだね。判別手続を利用した場合、具体的にはどのように秘密が保護されるのかな。
	事業者は調査対象となった場合、特定通信を提出する必要がありますが、提出を受けた公正取引委員会は、調査官と別に判別官を指名し、特定通信に該当するか等を確認し、確認後、調査官に引き継がずに事業者に還付されることになります。
	難しいね。判別手続の事前準備についても相談に乗ってくれるかい。
	もちろんです。公正取引委員会のホームページでも詳細が解説されていますので、参考にしてみてください。

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