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コロナ版ローン減免制度

中部経済新聞2020年12月掲載
コロナ版ローン減免制度

次男の勤務先が、コロナの影響で大幅に売上げが落ちて、次男の給与や賞与が大幅に下がったんだ。厳しい業績が続いていて給与等が元の水準に戻る見通しが立たないらしい。毎月の住宅ローンや教育ローンの支払いがかなり厳しいらしく、破産や個人再生をせざるを得ないかも。
社長、破産や個人再生をしなければならないとは限りません。コロナの影響が出る以前、具体的には今年の2月1日以前には、支払いが遅れたことがなく、コロナの影響による減収で初めて債務の支払いが困難になった方は、12月1日にスタートした、自然災害債務整理ガイドラインのコロナ特則、通称「コロナ版ローン減免制度」を利用した債務整理ができる可能性が高いです。
コロナ版ローン減免制度って?破産や個人再生よりもメリットがあるのかい?
コロナ版ローン減免制度は、コロナの影響で収入が減少し、支払いが難しくなった個人や個人事業主について、その生活や事業の再建を支援するため、破産等の法的倒産手続ではなく、簡易裁判所の特定調停手続を活用して債務の減免を行う制度です。
①制度を利用してもブラックリスト(信用情報)に登録されない、②弁護士等の専門家の支援を無料で受けられる、③ローンに個人の保証人がついていた場合に、原則として保証債務の履行を求められない、といった法的倒産手続にはないメリットがあります。
コロナ版ローン減免制度は、法律上の制度ではないんだ。 
はい。コロナ版ローン減免制度の利用要件等は、法律ではなく、金融機関団体、日弁連、商工団体等の関係団体が作成したガイドラインで定められています。
どのような債権者のローンが対象になるのかな?
住宅ローンや教育ローン、自動車ローンのほかに、カードローン、クレジット債務等も対象となります。個人事業者の事業性ローン、リース等も対象となりますよ。
利用したい人は、何をすればいいの? 
まずは、最も借入額が多い債権者に制度の利用を申し出ます。債権者の同意が得られたら、お住まいの地域の弁護士会を通じて、登録支援専門家の弁護士の手続支援を依頼します。
金融機関は制度の利用に同意してくれるものなのかな。
金融機関は、利用申出を受けたときは、制度の対象債務者に該当しないことが明白でない限り、着手同意書を債務者に交付することになっています。金融庁も金融機関に対し、この制度の積極的な活用を促していますし、金融機関が正当な理由なく同意しない場合は、当該金融機関が属する業界団体の苦情相談窓口への相談もできます。
それは安心だね。制度の対象になる債務の範囲はどこまでなのかな。
金融機関等に負う債務のうち、(1)2020年2月1日までに借り入れた債務、(2)2020年2月2日以降、同年10月30日までに新型コロナウイルス感染症の影響による収入や売上げ等の減少に対応することを主な目的として受けた貸付(①政府系金融機関の新型コロナウイルス感染症特別貸付、②民間金融機関における実質無利子・無担保融資、③民間金融機関における個人向け貸付け等)による債務が対象となります。
10月30日までってことは、例えば、これから住宅ローンの借り換えをしてしまうと、借り換え後の住宅ローンは、この制度の対象にならないの?
そうなんです。ですから、コロナの影響による減収で住宅ローン等の支払いが困難になった方は、借り換えをする前にコロナ版ローン減免制度を利用した債務整理を検討することが重要です。
破産だと、自宅を手放すことになるけど、コロナ版ローン減免制度では、自宅を残すことも可能なの?
もともと、自然災害債務整理ガイドラインでは、自宅の公正価額を原則5年以内に分割弁済することで残ローンの免除を受けて自宅を残せます。
コロナの場合、住宅の損壊はなく、自宅の公正価額が高額となり5年以内の分割弁済が困難な事案も多く生じうることから、コロナ版ローン減免制度では、「住宅資金特別条項型」の債務整理も新たに規定されました。個人再生手続における住宅資金特別条項と同様、住宅ローンは従来通り又はリスケジュールして払い続け、他の対象債務については減免を受けることも可能です。
家は生活の本拠だし、コロナで減収しても住宅ローンだけなら頑張れる人も多いだろうね。破産以外にも生活再建の道があると思うと希望が出るね。
はい。コロナの影響による減収で支払いが困難になった方には、是非、コロナ版ローン減免制度による債務整理を検討して頂きたいと思います。
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