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下請法~支払い遅れや値下げ禁止~

中部経済新聞2020年7月掲載
下請法~支払い遅れや値下げ禁止~

社長お久しぶりです。会社の方は落ち着かれましたか。
久しぶりだね。コロナウイルスの影響は少なからず出ているよ。当社も何とか生産ラインを確保して、親事業者に商品を納品し続けてきたけど、親事業者から、3か月前に納品した商品の支払について、コロナウイルスの関係で資金繰りが厳しいから、支払いを待ってほしいと言われていてね。通常の場合だと、毎月末日納品締切りで翌月末日払いなのだけど、ここまで遅れると当社も厳しい状況ではあるよ。
親事業者とは、あの大手メーカーですか。
そうだよ。取引停止になると困るから、我慢しないといけないと思っているのだけどね。
社長、それは、下請法に違反していますね。
下請法って何かな。

【下請法とは】

下請法とは、正式名称を下請代金支払遅延等防止法といいますが、下請取引の公正化と下請事業者の利益保護のため、親事業者が行ってはいけない禁止事項などが定められている法律です。親事業者と下請事業者が下記の資本金基準を満たした場合に下請法が適用されます。
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その法律では支払いについてどのように規定されているのかな。
下請法第2条の2で、支払期日については、給付を受領した日から起算して、60日の期間内において、かつ、できる限り短い期間内において、定められなければならないと定めています。そして、下請法第4条1項2号で、実際の支払日が定めた支払期日を経過することを禁止しています。
じゃあ、当社の場合、定めた支払期限は合法だけど、実際の支払が違法になっているってことだね。
違法の場合、何かペナルティはあるのかな。

【下請法違反のペナルティ】

公正取引委員会は、親事業者が下請法第4条1項2号に掲げる行為をしていると認めるときは、その親事業者に対し、速やかに下請代金や遅延損害金などを支払うよう勧告します。勧告された親事業者は、公正取引委員会のホームページの、「下請法勧告一覧」に事案を交えて掲載されます。
違法行為が公表されてしまうってことだね。その処分もなかなか厳しいね。
ちなみに、親事業者から同じ理由で、しばらくの間、商品の価格を下げてほしいと要請されているのだけれど、限度を超えた金額を提示されていて困っているよ。それも違法なのかな。
はい。下請法第4条1項5号に違反します。
この場合も、公正取引委員会から、下請代金の額を引き上げることを勧告され、下請法勧告一覧に公表されます。
なるほどね。ところで、下請法違反で勧告以外にペナルティはあるのかな。
下請法第3条1項で、親事業者は、発注に際して、下請事業者の給付の内容、下請代金の額や支払期日など、公正取引委員会規則に定める具体的記載事項をすべて記載している発注書面を直ちに下請事業者に交付する義務があり、それに違反すると50万円以下の罰金に処せられます。
発注書面がないだけで罰金とは、非常に厳しい処分だね。なぜ、そんなに厳しいのかな。
口頭発注の場合、後に様々なトラブルが生じる可能性があるからです。 
下請法違反のペナルティには、勧告や罰金があることは分かったのだけど、他に勧告や罰金になる場合にはどのようなものがあるのかな。
他に勧告となる場合には、①下請事業者の責に帰すべき理由がないのに給付の受領を拒むこと、②下請事業者の責に帰すべき理由がないのに下請代金の額を減らすこと、③下請事業者の責に帰すべき理由がないのに下請事業者の給付を受領した後、下請事業者にその給付に係る物を引き取らせることなどがあります。これらはすべて下請法第4条に規定されています。
罰金となる場合には、下請法第5条に定められている下請事業者の給付、給付の受領、下請代金の支払など公正取引委員会規則に定められている事項について記載し又は記録した取引記録に関する書類又は電磁的記録を作成しなかった場合などが挙げられます。
たくさんペナルティがあるのだね。ちなみに、公正取引委員会が親事業者の下請法違反を把握する場合って、下請事業者が申告した場合だよね。親事業者からの逆恨みや報復が怖くて下請業者が申告できない場合もあると思うのだけど。当社の場合も取引停止になると困るからね。
確かに、そのリスクがないとは言えません。ただし、下請法第4条1項7号で、下請事業者が公正取引委員会又は中小企業庁長官に対しその事実を知らせたことを理由として、取引の数量を減じ、取引を停止し、その他不利益な取扱いをすることを禁止されています。そして、違反した場合には勧告の対象となります。
報復行為も下請法違反になるなら少し安心だね。

【下請法違反の申告】

下請法違反の申告方法については、公正取引委員会か中小企業庁で受け付けています。下請法に関する相談も受けつけていますので、社長も一度相談されてみてはいかがですか。
そうだね。一度相談してみるよ。そういえば、私の友人である建設会社の社長も親事業者からの支払が遅れているって悩んでいたよ。彼も下請法違反として公正取引委員会や中小企業庁に相談すればいいのだね。
下請法は、建設業者に対して建設工事の発注を行う場合には適用されません。

【建設業の下請契約について】

えっ、そうなの。それじゃあ泣き寝入りってことなのかな。
そうではありません。建設業の下請契約に関しては、建設業法の適用があります。下請法よりも下請契約に関する規定が多く、建設業の下請業者は、建設以外の業種の下請業者より手厚く保護されています。また、建設業法の場合、下請法のような資本金基準がありませんので、親事業者、下請け着業者の資本金にかかわらず適用があります。
そうなのだね。なぜ、建設業法の方が保護が手厚いのかな
建設業界では上下の力関係が大きいからだと思われます。
確かにそうだね。友人はよく親事業者から不当な要請をされたと不満を言っているからね。
ところで、建設業の場合、建設業法違反の申告はどこにすればいいのかな。
国土交通省が「駆け込みホットライン」を開設していますので、一度電話されてはいかがでしょうか。
ありがとう。友人に伝えてみるよ。

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