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テレワーク導入で働き方改革促進を

中部経済新聞2020年5月掲載
テレワーク導入で働き方改革促進を

新型コロナウイルスの感染リスクを防止するため、テレワークを導入し、在宅勤務を行わせている企業が増えていますね。
弊社もテレワークの導入を検討しているのだがよく分からなくて。どのようなものなのかな。
【テレワークとは】
テレワークとは、労働者が情報通信技術を利用して行う事業場外勤務をいいます。時間や場所にとらわれない柔軟な働き方ができるため、多様な人材が能力を発揮するための手段として注目されています。
ではテレワークにはどのようなものがあるのかな。
分類としては①自宅で業務を行う「在宅勤務」、②労働者の属するメインのオフィス以外のオフィスを利用する「サテライトオフィス勤務」、③ノートパソコンや携帯電話等を活用して臨機応変に選択した場所で業務を行う「モバイル勤務」があげられます。
【テレワークのメリット】
テレワークの具体的なメリットを教えてもらえるかな。
労働者側からは通勤時間の短縮や業務の効率化、育児や介護と仕事の両立を図ることができます。
使用者側からは業務効率化による生産性の向上とオフィスコストの削減、遠隔地の優秀な人材の確保や育児・介護等を理由とした離職の防止などが挙げられます。
弊社は子育て中の社員が多いので育児と両立できるというメリットは大きいね。何かデメリットはあるかな。
【テレワークのデメリット】
在宅勤務の場合には仕事と仕事以外の時間の切り分けが難しく、労働時間の管理が困難であることや、情報セキュリティーが脆弱となりやすいことなどが挙げられています。
テレワークに伴う長時間労働の問題については、働き方改革実行計画(平成29年3月28日働き方改革実現会議決定)においても指摘されており注意が必要です。
なお、厚生労働省は「テレワークにおける適切な労務管理のためのガイドライン」を公表しています。
【導入時の注意点(労働時間の管理)】 
テレワークの導入の際に気をつけなければならないことを教えてもらえるかな。
テレワークであっても労働基準関係法令が適用されます。
えっ、そうなの。
テレワークを行う場合、労働時間の把握が困難になる場合が多いと思われますが、このような場合でも労働基準法が定めている労働時間管理を行わなくてはいけません。
タイムカードではできないよね。
さきほどのガイドラインでは、原則としてパソコンの使用時間の記録など客観的な記録により労働時間の把握をする必要があるとされています。
また、在宅勤務中のテレワークについては業務から離れる時間(いわゆる中抜け時間)の管理も必要となります。中抜け時間については、開始と終了時間を報告させるなどして休憩時間として扱ったり、始業時刻又は終業時刻で調整したり、時間単位の年次有給休暇として取り扱うなどの対応をすることになります。
テレワークでも時間管理をきちんとしなくてはならないんだね。事業場外なんだから、弊社で利用しているみなし労働時間制で対応できないかな。
事業場外みなし労働時間制は、実際の労働時間に関わらず所定労働時間を労働したものとみなす制度ですが、この制度は使用者の具体的な指揮監督が及ばず労働時間を算定し難いときのみ適用が許されています。そのため、社用パソコンにより会社のシステムにアクセスして業務を行うという場合には、使用者の具体的な指揮監督が及ばず労働時間を算定し難いとはいえないため、適用できないと思われます。
ただ、会社のシステムにアクセスせず、随時使用者の指示に基づいて業務を行うものでない場合には、事業場外みなし労働時間制を適用できることがあります。
そうか。他に注意点はあるかな。
長時間労働の防止措置や時間外・休日労働の管理が必要となります。
具体的には役職者からの時間外・休日等におけるメールの送付の自粛を命じることや、深夜・休日のシステムへのアクセス制限、テレワークを行う際の時間外・休日・深夜労働の原則禁止、長時間労働を行う労働者に対する注意喚起等の措置を行う必要があります。
また就業規則でテレワーク勤務規定等を規定し、時間外・休日・深夜労働を原則禁止することを明記しておくとよいと思われます。
なるほど。テレワークに対応した就業規則の見直しを検討するということだね。
【情報漏洩のリスクへの対応】
また情報を社外に持ち出すことになるため情報漏洩のリスクは会社での勤務と比較して格段に高くなります。そこで秘密情報を保有するような従業員に在宅勤務を行わせる場合には、情報管理システムの構築とともに、秘密保持に関する誓約書を作成させるなど情報漏洩のリスクを低減しておく必要があります。
確かに情報管理の点からは慎重に検討せざるを得ないね。
そうですね。ただ、適切な措置を講じれば対応できると思いますよ。
現在、新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、各企業の経営に深刻な影響が生じていますが、働き方改革を一層促進させる機会と捉え、テレワークを導入・実施することを積極的に検討してみてはいかがでしょうか。
そうだね。弊社も、テレワークの導入を検討してみるよ。