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中部経済新聞2019年8月掲載
誹謗中傷投稿の削除方法は 情報発信者の特定は可能?
中部経済新聞2019年8月掲載
誹謗中傷投稿の削除方法は 情報発信者の特定は可能?
先生、実は、あるインターネットサイトに我が社を誹謗中傷する投稿がなされているのを発見してしまってね。早急にその投稿を削除したいんだ。 | |
それは大変ですね。インターネット上に流通した権利侵害情報は、時間の経過により閲覧者が増加し、権利侵害が拡大していくことになりますので、早急な対応が必要です。 このような権利侵害情報を削除する方法は、裁判外で削除依頼する方法と裁判手続きを通じて削除請求をする方法があります。 |
裁判外の削除依頼というのはどういうものかね。 | |
裁判外の削除依頼は、①ウェブフォーム、電子メール、内容証明郵便を利用した削除依頼、②プロバイダ責任制限法に規定する送信防止措置の依頼の2通りに分けられます。 | |
それぞれの手続きについて説明してくれるかね。 | |
①まず、ウェブフォームや電子メールを利用した削除依頼は、ウェブサイト内にウェブサイト管理者へ連絡するためのウェブフォームやメールアドレスが表示されている場合に、これを利用して、ウェブサイト管理者に問題となっている情報の削除を依頼するものです。ウェブサイト内にウェブサイト管理者の住所が表示されていれば、内容証明郵便を利用して削除依頼をすることができます。 この方法は、手続きが簡易であるというメリットがありますが、あくまでもウェブサイト管理者に対して自発的な削除を促すものにすぎず、常に削除対応が行われるわけではないというデメリットがあります。 |
送信防止措置依頼というのはどのようなものなのかね。 | |
②送信防止措置依頼というのは、プロバイダ責任制限法に規定されている送信防止措置(情報の削除)を講じることをプロバイダやウェブサイト管理者に依頼するというものです。 プロバイダ等は、権利侵害情報ではないのにその情報を削除すると情報発信者に対して、反対に、権利侵害情報を放置すると被害者に対して、それぞれ損害賠償責任を負うことになります。そこで、プロバイダ責任制限法は、一定の条件を満たした場合にプロバイダ等の責任を制限することで、プロバイダ等が情報の削除に応じやすくしています。 ですので、送信防止措置依頼をすることにより、ウェブフォーム等を利用する場合に比して削除対応がされやすいというメリットがあります。 | |
その送信防止措置依頼というのは簡単にできるものなのかね。 | |
プロバイダ責任制限法ガイドライン等検討協議会が策定したガイドラインに送信防止措置依頼を行う際の書式が掲載されていますので、それを利用することで、比較的簡単に送信防止措置依頼をすることができます。 | |
送信防止措置依頼をすれば、必ず削除に応じてくれるのかね。 | |
そういうわけではありません。送信防止措置依頼もプロバイダ等に対して自発的な削除を促すもの(削除義務があるものを削除しなかった場合に損害賠償責任を負うという間接的な強制力はあります。)ですので、削除されない場合もあります。その場合には、裁判手続きにより削除を求めることになります。 |
なるほど。ところで、我が社を誹謗中傷する情報が投稿されたウェブサイトのウェブサイト管理者、プロバイダが分からないんだが、その場合はどうすればいいんだね。 | |
プロバイダ等の特定方法は、①ウェブサイト内の表示から調査する方法と、②WHOIS検索を利用して調査する方法の2つがあります。 ①ウェブサイト内の表示から調査する方法は、権利侵害情報が投稿されたウェブサイトのトップページ、リンク先等に当該サイトの運営者の名称、住所、メールアドレス、ウェブフォーム等が表示されていないかを調査するというものです。 |
では、WHOIS検索というのはどういうものかね。 | |
WHOIS検索とは、「WHOIS」というインターネット上のサービスを利用するものです。このサービスは、IPアドレス(パソコンやスマートフォンなどネットワーク上の機器を識別するために割り当てられていて、インターネット上での住所のような役割を担っているもの)の割り当て先やドメイン名(IPアドレスを文字列に変換したもの。「.jp」等)の登録者に関する情報等をインターネット利用者が参照できるようになっています。 | |
難しい話になってきたな。WHOISというのは簡単に利用できるものなの。 | |
WHOISは、検索したいウェブページのURL中の組織が特定できる情報(「〇〇.jp」や「〇〇.com」の部分)を入力するだけで検索が可能です。WHOIS検索を行うと、ドメイン名の登録者等が表示されますので、当該情報からプロバイダ等の連絡先等を知ることができます。 |
情報発信者に対しては何も請求はできないのかね。 | |
権利侵害情報の発信者に対しては損害賠償請求をすることができますが、その前提として、情報発信者が誰であるかを特定する必要があります。プロバイダ責任制限法は、権利を侵害されたとする者がプロバイダ等に対して発信者情報の開示を請求することができる旨を定めています。手続きの流れとしては、プロバイダ等に発信者のIPアドレス、タイムスタンプ(情報発信時刻に関する記録)等の発信者情報の開示を請求します。その後、開示されたIPアドレス等をもとに、WHOISを用いて、発信者が利用した経由プロバイダを特定し、当該経由プロバイダに対して情報発信者の氏名、住所等を開示するよう求めていくという2段階の手続きとなります。 | |
なんか難しそうだから先生にお願いするよ。情報発信者に対しての請求までお願いしてもいいかね。 | |
分かりました。ただ、ネット社会特有の問題かも知れませんが、これらの制度にもやはり限界がありますので、情報発信者に対する請求が必ず奏功するわけではないということだけはご理解ください。 |
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