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改正健康増進法の一部施行 ~望まない受動喫煙なくす~

中部経済新聞2019年5月掲載
改正健康増進法の一部施行 ~望まない受動喫煙なくす~

今回も失敗した。
どうかしましたか。
元号も変わったことだし,禁煙しようと思ったんだけどね。
そうでしたか。今後,オリンピック開催に向けて,たばこが吸える場所が規制されていくので,私も禁煙しようとは思っているんですがね。
ああ,何か法律が改正されたんだよね。

【健康増進法の改正】

そうです。健康増進法が一部改正され,今後,段階的に施行されます。
どんな内容なの?

【受動喫煙の防止】

ポイントは「望まない受動喫煙」をなくすということです。受動喫煙が他人に与える健康影響と,喫煙者が一定程度いる現状を踏まえ,屋内において,受動喫煙にさらされることを望まない人がそのような状況に置かれないようにすることを基本としています。
愛煙家として周囲に迷惑かけないのは当然のマナーだけど,法律で規制するんだね。

【子ども等への配慮】

そうです。特に,受動喫煙による健康影響が大きい子どもや病気の方等に特に配慮した内容となっています。
なるほど。

【施設の類型・場所ごとに対策を実施】

具体的には,施設の類型・場所ごとに,主たる利用者の違いや,受動喫煙が他人に与える健康影響の程度に応じ,禁煙措置や喫煙場所の特定を行うとともに,掲示の義務付けなどの対策を講ずることにしています。
施設の特性等により違いがでるんだね。対策にしてもいろいろ準備が必要そうだ。

【段階的施行(本年7月から)】

そうですね。それ故,段階的に施行することとして,まずは,今年の7月から,学校や病院,行政機関を対象とした規制が始まります。内容も原則敷地内禁煙と厳しいものです。
子どもや病気を持った方,多くの人が利用する施設から対策を講じていくんだね。
そうです。ちなみにこの禁煙というのは,従来のたばこだけでなく,加熱式たばこも含みます。
そうなのか。原則ということは例外もあるのかな。

【受動喫煙防止措置】

はい。屋外に一定の受動喫煙防止措置がとられている「特定屋外喫煙場所」が設置されている場合は,その場所に限り喫煙が可能です。
特定屋外喫煙場所?
受動喫煙防止措置がとられている場所のことです。
具体的には,

①喫煙をすることができる場所が区画されている(喫煙専用の建物または壁やつい立てなどで仕切ってある)こと,

②喫煙することができる場所である旨を記載した標識が掲示されていること,

③施設を利用する者が通常立ち入らない場所(建物の出入り口ではなく,建物裏や屋上を想定)に設置することです。

また,近隣の建物に隣接するような場所に設置することがないようにするといった配慮が求められます。
なるほどね。

【全面施行(来年4月から)】

そして,来年4月1日からは,全面施行になります。
全面施行か。これはうちの会社にも関係することだね。
はい。民間企業の社屋や事務室,商業施設,飲食店等,多数の方が利用する施設は原則屋内禁煙となります。
ホテルや旅館等の宿泊施設についてもロビーやレストランなどの共用の場では原則禁煙になりますし,バスや電車,新幹線やフェリーなどの乗り物内も原則禁煙となります。
屋外に行かなきゃ喫煙できないの?
いえ,屋内でも,例外的に一定の要件を満たした,専用の各種喫煙室を設置した場合には,その喫煙室に限り可能です。
各種喫煙室?
そうです。施設の分類により,喫煙室も複数のタイプが設定されており,それぞれ設置可能となる条件が異なります。
うちの会社でも設置できるの?
はい。会社や飲食店など一般的な事業者の施設では「喫煙専用室」と「加熱式たばこ専用喫煙室」を設置することができます。
何か違いがあるの?
「喫煙専用室」内では,喫煙を行うことはできますが,それ以外の飲食を始めとするサービス等を提供することはできません。一方,「加熱式たばこ専用喫煙室」内では,経過措置として,厚生労働大臣が指定した加熱式たばこに限定されますが,飲食を始めとするサービス等を提供することを可能としています。
なるほど。
ただ,技術的要件(出入り口において室外から室内に流入する空気の気流や,排気等)を満たさなければならないところは同じです。
受動喫煙を防止しなければならないという意味では加熱式たばこも同様というわけか。他にも喫煙室のタイプはあるの?
はい。シガーバーなど,喫煙をサービスの目的とする施設については,受動喫煙防止の構造設備基準に適合した室内空間に限り,「喫煙目的室」を設けることができます。
たばこと切り離せない施設だね。
そうですね。また,経過措置ではありますが,既存の経営規模の小さな飲食店に限っては「喫煙可能室」を設置することができ,ここではたばこの喫煙も可能ですし,飲食等の提供もできます。
たばこを吸う人がお客さんの大半の小規模飲食店では影響大きいよね。

【専用標識の設置】

各種喫煙室は受動喫煙の防止が目的ですから,逆に,たばこを吸わない人が間違ってしまわないように,喫煙可能な設備を持った施設には必ず,指定された標識の掲示が義務付けられています。
吸わない人にも分かるようにするということだね。

【20歳未満立入禁止】

はい。また,各種喫煙室には,20歳未満の者が立ち入ることは禁止されます。
子どもへの影響を考えているんだね。
例えば,20歳未満の従業員が,掃除等の業務で喫煙専用室に立ち入ることも禁止されますので,気を付けてくださいね。
わかったよ。屋内全面禁煙は難しいから喫煙室をつくろうかな。来年3月までに準備しないといけないね。
私も社長と打ち合わせする際は喫煙室がないと厳しいです。事業者が,受動喫煙対策を行う際の支援策としては,各種喫煙室の設置等に係る,財政・税制上の制度も整備されているようです。厚生労働省のホームページには,「なくそう!望まない受動喫煙。」と題した特別サイトもありますので,参考にしてみてください。
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