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特定商取引法による規制

中部経済新聞2018年12月掲載
特定商取引法による規制

知り合いの社長が店舗のお客が減ってきたから、インターネットでの通信販売を考えているって言っていたんだよ。
最近はネットショッピングが増えていますからね。
でも法律で色々規制があるようだね。
通信販売の場合は、特定商取引法が適用されるため注意が必要ですね。
特定商取引法については、クーリング・オフとかは聞いたことがあるけど、詳しくは知らないんだよね。
特定商取引法は、消費者被害の防止を図るための法律です。特に問題となりやすい商取引について、事業者による勧誘行為を規制するなど紛争を回避する規定や、クーリング・オフ等紛争を解決するための手続等を定めています。
【特定商取引法の対象となる取引】
特に問題となりやすい商取引って、どんな取引なんだい?
①訪問販売、②通信販売、③電話勧誘販売、④個人が販売員として勧誘し、勧誘された人が次の販売員を勧誘するという連鎖販売取引、⑤エステなど特定継続的役務提供、⑥仕事を提供するからその仕事ために必要な商品を買ってほしいという業務提供誘引販売取引、⑦事業者が消費者の自宅を訪問し貴金属などの物品を買い取るという訪問購入が対象となっています。
そんなに多くの取引が対象となっているんだね。
そうです。時代により、必要となる規制が変わるためです。訪問購入は、金の高騰により貴金属の押し買いの被害が急増したために、平成24年の改正で導入され、平成25年2月21日から施行されています。
なるほどね。通信販売も、昔は新聞やテレビを見て、電話で注文していたのに、今では、インターネットでクリックするだけで購入できるような時代だからね。
【通信販売の規制】
そうですね。新聞、雑誌、テレビ、インターネット上のホームページ、ダイレクトメール、チラシ等を見た消費者が、郵便、電話、ファクシミリ、メール、インターネット等で購入の申込みを行う取引方法は、すべて通信販売に含まれ、特定商取引法が適用されます。
通信販売では、事業者は、どのようなことに注意する必要があるのかな?
通信販売は、隔地者間の取引ですので、消費者にとって、取引の内容や事業者の情報がとても大切になります。
確かに、店舗販売と違って、お店の人と実際に会っていないから不安があるね。
【広告の表示】
そのため、広告に表示する事項が定められています。表示事項としては、にあるように販売価格や送料、代金の支払い時期や方法、商品の引渡時期、返品の可否など返品に関する事項、事業者の氏名、住所、電話番号など詳細に決められています。ただ、広告のスペースの関係上、すべて表示ができない場合には、消費者からの請求により、所定の事項を記載した書面やメールを遅滞なく提供することを広告に表示し、そのような措置を講じている場合には一部省略が認められています。
なるほど。消費者が取引の内容や事業者についての情報をきちんと入手できるようにしているんだね。
そうです。また、通信販売では、広告が非常に重要な役割を果たしています。
確かに、テレビショッピングなどを見ていると、買いたくなるからなぁ。
そのため、特定商取引法では、「著しく事実に相違する表示」や「実際のものより著しく優良であり、もしくは有利であると人を誤認させるような表示」を禁止しています。
広告には注意が必要だということだね。お客さんが買った後で、期待していたのと異なるから返品したいという場合は、クーリング・オフをするということになるのかな?
訪問販売と異なり、通信販売にはクーリング・オフの規定はありません。
えっそうなんだ。
【通信販売における契約の申込みの撤回または解除】
訪問販売では、消費者が契約を申し込んだ場合でも、法律で決められた書面を受け取った日から数えて8日間以内であれば、消費者は事業者に対して、書面により申込みの撤回や契約の解除をできるというクーリング・オフが定められています。しかし、通信販売の場合は、訪問販売と異なり自主的に判断できるという理由から、クーリング・オフの適用はありません。
知らなかった。
ただ、通信販売の場合には、契約の申込みの撤回または解除についての規定が別途定められています。
どんな規定なのかな?
返品特約がない場合には、消費者が契約を申し込んだ場合でも、その契約にかかる商品の引渡しを受けた日から数えて8日間以内であれば、消費者は事業者に対して、契約の申込みの撤回や解除ができ、消費者の送料負担で返品ができるというものです。
では、返品特約がある場合には、返品できるかどうかは特約によるということだね。
そうです。返品特約には、返品の可否や返品の条件、返品に係る送料の負担などを定めることになります。
そういえば「使用前に限り返品ができます」というのを見たことがあるなぁ。
消費者にとって、どういう場合に返品ができるかは非常に重要ですので、返品特約を定める場合には広告に必ず表示しなくてはならず、省略することもできません。
【未承諾メール等の禁止】
通信販売についてほかにどんな規制があるのかな?
通信販売の広告として、メールを利用することが考えられますが、特定商取引法は、事業者が、予め承諾していない消費者に対し、電子メール広告を送信することを原則禁止しています(オプトイン規制)。また、ファックスについても、同様に未承諾者に対する広告は禁止されています。
時々、ファックス広告が送られてくるけど・・・
特定商取引法は消費者を保護するための法律であるため、原則として、事業者間には適用がありません。そのため、消費者と認められない事業者や会社は規制の対象外となっているわけです。
なるほどね。
【申込み内容の確認】
あと、インターネットで通信販売をする場合には、顧客の意に反して契約の申込みをさせようとする行為が禁止されています。そのため、画面などで消費者が申込みの内容を容易に確認し、訂正できるようにする必要があります。
そういえば、インターネットショッピングでは、申込みの内容についての確認画面が出てくるようになっているね。
そうですね。申し込むつもりがないのにボタンをクリックしてしまったということにならないようにするためです。
なるほどね。今回、インターネットで通信販売をする場合に注意するポイントがよく分かったよ。
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