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フランチャイズの競業避止義務~まずは契約書の確認を!

中部経済新聞2018年10月掲載
フランチャイズの競業避止義務~まずは契約書の確認を!

私は、現在、持ち帰り弁当のフランチャイズチェーンに加盟しているんだけど、フランチャイズ本部の不祥事が相次いでいてね。なので、加盟しているフランチャイズチェーンから脱退して、自分で同じ事業をやっていきたいと考えているんだが、そのとき法的に何か問題は生じるかね。
不祥事続きの本部なら脱退も仕方ないですね。契約書に競業禁止条項はありますか。
あるね。契約期間終了後も競業禁止義務を負うって書いてあるよ。契約が終わっているのに競業禁止義務を負わされるということはあり得るのかい。
あり得ます。例外はありますが、基本的には、契約期間終了後も競業禁止義務を負う旨の定めが契約書に存在すれば、フランチャイジー(加盟店)は、契約期間中だけでなく、契約期間終了後も、競業禁止義務を負うことになります。
そうなんだね。
はい。フランチャイズシステムは、フランチャイザー(フランチャイズ本部)の営業秘密やノウハウの開示により生成・発展してきており、これらの営業秘密等をフランチャイズシステム内で独占的に使用させることには、通常、相当の合理性が認められますので、フランチャイズ契約終了後であっても、フランチャイジーであった者の競業を無制限に許すことは妥当ではないからです。
じゃあ、フランチャイザーは、契約書に書いておけば、ずっとフランチャイジーに競業禁止義務を負わせられるというわけか。
そうでもありません。フランチャイジーが、契約終了後も、無制限に競業禁止義務を負うとなってしまうと、今度はフランチャイジー側の職業選択の自由ないしは営業の自由を不当に制限することになってしまい、あまりにもフランチャイジーに酷ですので、契約終了後の競業禁止義務規定も一定程度の制限を受けます。
一定程度の制限ってなんだい。
競業禁止義務の規定の一部若しくは全部が無効となる場合があるということです。有効無効を判断する際の画一的な基準はありませんが、競業を禁止する側の利益と、競業を禁止される側の利益それぞれを考慮して、期間及び地域が限定され、かつ、営業の種類を特定した上で競業を禁止する契約は、特段の事情がない限り有効であると考えられています。
難しいね。競業禁止により守られるべきフランチャイザー側の利益ってなに。
顧客・商圏の維持と、ノウハウを含む会社の内部情報だと考えられています
なるほどね。では、今回の私の場合はどうなるんだい。
契約書上、競業禁止義務は、具体的にどのように規定されていますか。
禁止区域が「加盟契約における営業場所と同一住所」となっていて、「契約期間中と同一業種による同一事業を行ってはならない」とされているよ。
競業禁止義務が課せられる期間については規定されていますか。
期間については何も書いてないね。そうすると、期間について定めがないから、今回の競業禁止義務規定は無効となるわけか。
それも違います。あくまでも、競業を禁止される側の利益と競業を禁止する側の利益との調整を図って有効か無効かを判断するもので、期間や地域等の定めは、その際の一考慮要素に過ぎません。ですので、期間についての定めがなくても、禁止区域や禁止とされる対象業務の範囲を限定するなどして、競業禁止義務をフランチャイジーに課しても不当だと判断されない場合には、期間の定めがなくても有効だと判断されることはあります。
そういうことか。
また、ノウハウや営業秘密の保護、商圏や顧客の維持の要請が強い場合などには、より強度な競業禁止義務をフランチャイジーに課すことができますし、ノウハウの保護等の要請が弱い場合には、弱い競業禁止義務しか課すことができません。
実際の裁判例だとどうなっているの。
社長の契約条項と同様に、禁止期間の定めがなく、禁止区域を加盟契約における営業場所同一住所地と定め、禁止される営業の種類を契約期間中と同一業種による同一事業と定めていたという事案で、裁判所は、競業を禁止する場所が一カ所に限定されており、競業を禁止する営業の種類も限定されていること等の事情を考慮して、当該競業禁止規定を有効であると判断しています。
ということは、私は、フランチャイズチェーン脱退後も、契約書に規定されている競業禁止義務を負うというわけか。
事案によりけりなので、確定的なことは言えませんが、そう判断される可能性が高いでしょうね。ちなみに、社長の店舗が、持ち帰り弁当のフランチャイズチェーンでなく、宅配型の弁当のフランチャイズチェーンだった場合には、利益状況が異なりますので、競業を禁止する場所を配達圏内まで広げることが認められる余地は十分ありますが、その反面、競業禁止期間の制限(例えば2年なり3年)を設ける必要もでてくると思います。
そうなんだね。それでは、秘密保持義務についてはどうだい。秘密保持義務も、同じように契約終了後も効力が残るのかい。
そうですね。フランチャイズシステムは、フランチャイザーのノウハウや営業秘密の伝授を一つの重要な要素としていますので、契約終了を機に、当該営業秘密等を利用してフランチャイザーの競業者となることが何の規制もなく認められてしまえば、フランチャイザーの利益が害されるだけでなく、フランチャイズシステムそのものが根底から崩されるおそれがでてきます。したがって、期間についての特段の定めがなくても、基本的に秘密保持義務規定は有効であると考えられています。
なるほどな。
ちなみに、競業禁止義務や秘密保持義務に違反すると、それによりフランチャイザーが被った損害を賠償する義務を負うことになります。また、違反行為について差し止めの請求を受ける場合もあります。
違反のリスクは大きいね。よく分かったよ。また色々と相談させてもらうよ。
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